FXがゼロサムゲームと言われる理由
- 更新日: 2020/05/27
FXトレードはゼロサムゲームと言われます。FXトレードがゼロサムゲームである理由を探るとともに、ゼロサムゲームを前提とした上でのFXトレードの戦い方をご紹介します。
各金融市場にはそれぞれ独自の特徴があります。
テクニカル指標など、いずれの金融市場にも対応する手法がある反面、その金融商品の持つ独自の特徴を把握した上で取引ルールを作成し実行することが、各金融市場でのトレード攻略のためには必要不可欠と言えるのではないでしょうか。
この記事の目次
ゼロサムゲームとは
ゼロサムゲームとは、参加者全員の合計得点(総和)が常にゼロとなる方式のゲームを指します。合計得点がゼロのため、誰かの得点が増えれば・誰かの得点がマイナスとなります。よって勝者の裏側には必ずマイナス得点の敗者が生じるシビアなゲームです。
FXはゼロサムゲームと言われる理由
FXはゼロサムゲームと言われることが多くあります。その最大の理由は、何かの通貨が上がれば、何かの通貨が下がる、という部分にあります。
例えば金融危機が発生すると、安全資産と言われる円が買われ他の通貨が売られやすくなります。為替市場では株式市場と異なり全銘柄(通貨ペア)暴騰・全銘柄(通貨ペア)暴落という現象は、生じることはありません。まさに為替市場はゼロサムゲームの世界です。
よって2種類の通貨から構成される通貨ペアのトレードを行うFXトレードでは、為替市場の値動きの特性を捉える必要があります。
先ほどの円が買われる例では、反対側の売られている通貨を見つけることで効率的なトレードが可能となります。
例えば円が買われて、豪ドルが売られているようなら、AUD/JPYを売る(AUD↓+JPY↑)ことで、ポジションを持った後で狙いの方向に動きやすいトレードが可能となります。
いくら円が買われていると言っても、通貨ペアベースで相手先の通貨の選択を誤れば(例えば日本円と同様、安全資産と言われるスイスフラン)、通貨ペアベースでは殆ど値動きを見せずに、トレードは失敗に終わる可能性が高いです。
よってFXトレードで勝つには、ゼロサムゲームの特徴を踏まえた上でトレード戦略を立てる必要があります。単にテクニカル指標を利用しての売買のみで勝てるケースもあります。
しかしより勝率を高めるために、FXトレードでは他の金融商品とは異なり、軸となる通貨を決めたら一方の相手方通貨を何にするのか、との視点が必要です。
株式投資はゼロサムゲームではない
FXトレードとの比較対象として株式トレードが例として取り上げられるケースが多い中、両者の違いはゼロサムゲームか否かと言う点が代表例です。
株式市場では全銘柄暴騰・全銘柄暴落といった、殆どの銘柄が同一方向に動くケースは珍しくありません。特に金融危機等の経済混乱が生じた場合、一斉にマイナス方向に動く特徴があります。
また殆どの銘柄が上昇するケースが、長いスパンで見れば少なくとも数年に一度は生じます。
よって長期に渡り累積投資で株式保有をすることで、仮に銘柄選択を失敗したとしても、全銘柄上昇効果で株価上昇の恩恵を受ける可能性が高くなります。
また株式投資では多くの銘柄が同様の値動きを見せる特徴を活かして、インデックス投資を手掛けることも可能です。インデックス投資を行うことで、保有している銘柄だけ上昇しなかった、というリスクを減らすことも可能となります。
FXトレードが株式トレードより難しいと言われる理由
よく株式トレードよりFXトレードのほうが難しい、と言われます。その理由はゼロサムゲームから説明することができます。
ゼロサムゲームのFXトレードでは勝者の裏側に敗者が必ず存在します。そして多くの初心者トレーダーが最初は敗者からスタートすることに。
経験を蓄積することで初心者トレーダーも勝者の側に入ることも可能です。ただし多くの場合は勝者の側に入るより先に、資金が尽きる・あきらめるなどでFXトレードをやめてしまいます。そして最終的にFXトレードにおいて損のみが残る形となります。
一方で株式トレードでは、全銘柄上昇の期間がどこかのタイミングで発生することが多いため、長いスパンで株式を保有することで(累積投資をすることで、特に相場の下げ局面で取得コストを下げることができれば尚よい)、勝てる可能性は高まります。
よって投資初心者であっても株式投資は、長いスパンで継続投資を心がけることで、いずれ生じる上昇相場に乗り資産増加を果たすことが可能です。
株式投資はポジションを持ち続けることさえできれば、上昇相場を捉えて利益を出し易い性質があります。
一方FXトレードは、何かの通貨が上がれば、何かの通貨が下がる、という相対的な性格から、株式投資のように、保有のポジションを持ち続けていても、そのポジションがプラスで決済される保証はどこにもありません。
ポジションを持ち続けることで最終的にプラスとなる可能性が高い株式投資に比べ、ポジションの継続保有によっても資産増加の可能性が高いとは言えないFXトレード。ゼロサムゲームという観点から、取引の難易度は「株式<FX」となるのは、やむを得ない一面があります。
ゼロサムゲームのFXの攻略方法
ゼロサムゲームのFXでは、その性質に応じた攻略方法を立案する必要があります。株式投資とは性質が異なるFXトレードを攻略するために必要とされる視点について、下記で2点取り上げました。
1.ルール化及びルール厳守
FXトレードに限りませんが、株式取引や先物取引においても、取引のルール化は必要不可欠です。投資家が好きなタイミングで売買して勝てるようなら誰もトレードに苦労はしません。
FXを始めどのような金融商品でも、過去の検証をするなどしてトレードのルール化は必要不可欠です。エントリールール、損切ルール、利益確定ルールの主に3つのルールを定める必要があります。
ただし逆に言えば本3点をルール化できれば、トレードで勝ち切る可能性は高まります。値頃感や単なる根拠の無い相場観のみで泥縄式にトレードしているようでは、いくら投資経験が増えても、トレードの腕前は上達しません。
ルール化し、そのルールに基づくトレード経験の蓄積があってこそ、トレードは上達すると言えます。
ベテラントレーダーのトレードには全ての行動に理由=ルールがあります。株式トレードに比べてゼロサムゲームとの観点から難易度が高いと言われるFXトレードでは、一層トレードのルール化が必要です。
ルール厳守が意外な盲点
実はトレードのルール化は時間と経験さえあれば誰でもできる作業です。数々の経験や知識などから、トレードのルール化ができればそれでFXが勝てるかと言えば、そこにはまた新しいハードルが存在。
それは、ルールを守り切る、というハードルです。どんなに立派なルールを作っても、そのルールを守らなければ何も意味を持ちません。しかしFXにおいて意外な盲点は、ルールを守る、という視点です。
人間誰しも自分に甘い生き物です。よって事前に作成したトレードルールから逸脱したトレードを行いがちです。
本来エントリーすべき場所ではない所なのに待ち時間がもったいないからエントリーした、本来損切を行う場所だがもう少し様子を見たいから損切注文を外した、過去の損を取り返すため本来決済すべき所で決済せず粘るなど、本来のルールから逸脱したトレードをした経験のあるトレーダーは、殆ど全員と言っても過言ではありません。
本来の損切をせず、一旦損切注文を外すことによって、損切を避けられるケースは多々あります。ただしそれは、ある日突然やってくる大暴落の際に、投資資金の殆どを失うリスクを取っているのと同じことです。
まさか自分だけは・・・、ということが相場では頻繁に発生します。そしてタマタマのルール破りをしていると、それが頻発し、結局ルールを守らないのと同じ結果を招きます。
FXトレードではルール作りも大切ですが、ルールを厳守するという実行段階も非常に重要です。
2.他の通貨ペアや値動きが相関する商品市場等も見る
ゼロサムゲームの為替市場では、目の前でレートが動く通貨ペアの値動きのみを追っていては不十分です。
例えばUSD/JPYのトレードを行う際は、米ドルと日本円の値動きに影響する通貨ペアなどの値動きを見ることで、より値動き予想の精度を高めることができます。ドルが関連するいわゆるドルストレート通貨は、概ね似たような値動きを見せます。
例えばUSD/JPYが上昇していても、EUR/USDやAUD/USD、USD/CADなどの他のドルストレート通貨が殆ど値動きがないようなら、USD/JPYの値動きは単なるダマシの可能性が高いと言えます。
またUSD/JPYは日本の株式市場の影響を受けるケースが多いため、日経平均株価やTOPIXの値動きを見ることも、USD/JPYの値動きを予想する、・値動きの理由を考える際には必要となります。
上記はUSD/JPYのケースですが、資源国通貨の場合は原油価格(WTI)や金価格などの値動きを見ることも、資源国通貨を取引する際は有効です。
2種類の通貨同士の綱引となり、ゼロサムゲームとなるFXトレードでは、2種類の通貨の値動きを見ることは元より、各通貨に連動する傾向にある通貨や株式市場・商品市場も同時に見ることで、トレードの優位性を高めることができます。
ただし2種類の通貨に加え、株式市場・商品市場と、FXトレードを行う際には見るべき市場が非常に多くなります。この点を手間と思うようですとFXトレードは非常に難しいものとなります。
逆にこれらの市場の特徴に興味を持つと、FXトレードでの勝利にグッと近づくことに繋がります。
取引する金融商品の各特徴を把握する大切さ
為替市場はゼロサムゲームの世界であり、その特性を踏まえて2種類の通貨のみではなく、様々な市場を見ながらトレードする必要性を上記で指摘しました。
為替市場同様、金融市場にはそれぞれ商品によって独特の特徴があります。
個人投資家の比率が比較的多い株式市場、プロ投資家が多い各先物市場、プロの投資家が殆どながら値動き自体はユッタリしている債券市場、個人投資家が殆どの仮想通貨市場など、市場の特徴に応じて攻略方法も変わります。
サポート&レジスタンス分析始め、どのような金融市場においても利用できる汎用的な分析方法は存在します。しかしながらそれぞれの市場を攻略するためには、もう一歩進んで、その市場に応じた攻略方法を生み出す必要があります。
株式市場には株式市場の、為替市場には為替市場の独特の難しさがあります。よって一方で経験を積んだベテラントレーダーであっても、早期に別の市場で活躍できるとは限りません。
どんな市場でも通用する分析方法を持っていても、各市場に応じたトレード方法や分析方法の確立が無ければ、各市場で勝ち切るのは難しいでしょう。
そして、各市場に応じた攻略方法、という視点は案外知られていません。FXの場合はゼロサムゲームを前提とした攻略方法が必要不可欠です。
トレードルールを作り上げる際は各市場の特徴を理解し、その特徴を加味したルールを作り上げるべきです。
まとめ
何かの通貨が上昇すれば、何かの通貨が下落する相対的な性質を持っている為替市場を相手にするFXトレードは、ゼロサムゲームです。
確かに単なる得点差を競うゲームに比べれば難しい面も存在しており、勝者の裏側には敗者も存在します。ただし、逆にゼロサムゲームを利用してのトレード戦略を立案することができます。
ゼロサムゲームを利用することができるのは、FXトレードの他の金融商品のトレードに対する優位点の1つです。
値動きに対し1つの通貨だけではなく2つの通貨が絡んでおり、更に株式市場や商品市場も影響を及ぼすFXトレードは、他の商品に比べると目の前の単体チャートのみでのトレードは難易度が高い存在です。
しかしながらトレードに利用できる情報量は、他の金融商品に比べ多いと言えます。
ゼロサムゲームだから、と言ってFXには近付かないという判断でも構いません。しかしもしFXトレードを行う場合は、ゼロサムゲームを前提として攻略のためのルールを検討してはいかがでしょうか。これまでとは異なる新しい視点でFXトレードを俯瞰することができますよ。
FXにまつわるコラムについては以下の記事でまとめられているので、ぜひ参照してください。
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