2019.1.18 ドル円は強い上昇トレンド。東京時間は1ドル109円40銭を試す展開に
- 更新日: 2019/01/18
1月18日(金)の東京時間は、昨日のニューヨーク時間で1ドル109円40銭近辺まで上昇したことを受け、円安地合いに。1ドル109円25銭~109円35銭前後で小動きとなった後、1ドル109円40銭を試す動きとなっている。
昨日のニューヨーク時間での急激な円安は、米・ウォール・ストリート・ジャーナル紙が「ムニューシン米財務長官が、中国からの輸入品に課せられている関税の一部または全部を撤廃することを提案した」と報じたことによるもの。このところのドル円の上値抑制原因となっていた米中貿易摩擦への懸念が後退した形だ。ただ、その後、米財務相報道官がこの報道を否定しているため、この問題に対する懸念が完全に後退したわけではない。
とはいえ、この日発表された1月フィラデルフィア連銀製造業景気指数が事前予想を大幅に上振れたことがドル円を下支えしており、このところ軟調だった米国の経済指標を受けた米国の景気減速懸念が、いったん後退したものとみられる。
だが、積極的なドル買いが続くには、懸念材料が多い。FRBが今年の利上げを1回にとどめるとの見方は払しょくされていない。また、米政府機関の閉鎖は27日目に突入し、過去最長記録を更新中だ。ただ、昨日発表の1月フィラデルフィア連銀製造景気指数の結果を鑑みると、現在のところ、米政府機関の閉鎖による米国経済への影響は最小限にとどまっていると考えられる。
また、米中貿易摩擦についても、今月30日と31日に行われる閣僚級協議での動向に注意が必要である。昨年6月と同様に閣僚級協議が決裂した場合は、人民元が暴落する可能性がある。いずれにせよ、この問題の肝となる5Gや知的財産、中国の産業政策である「中国製造2025」等、中国の構造に関わる問題に関して3月1日までの期限に合意するのは難しいとの見方は変わらず、円安トレンドが長期的なものになりにくい状況であることは変わらない。
なお、ロンドン時間には、EUの11月経常収支(季節調整済・季節調整前)が発表されるが、ここでの数字がどうなるかに注目したい。トランプ米政権はユーロ圏の経常黒字拡大を過大だと批判している。ちなみに、EUの経常収支は9月が180億ユーロ、10月が230億ユーロとなっていて、EUの貿易黒字は拡大している。なお、ECBは経常黒字の対GDP比率について、2019年は2.7%に低下し、2021年までにさらに2.5%に低下すると予想しているため、今回、経常収支の数値はもちろんのこと、経常黒字の対GDP比率についても注意したい。
さらに、本日は英国の12月小売売上高が発表されるが、今回は前回に比べて弱い数字が予想されている。先日、メイ首相がEUと結んだEU離脱協定案が英議会において大差で否決され、その後もこの問題を巡る混乱は続いている。今回発表される小売売上高が予想を下振れた場合、急激なポンド売りを引き起こすと考えられるが、予想通りに着地した場合も英国の景気減速が懸念され、ポンド売りに繋がる可能性がある。
ドル円への影響はさほど大きくないが、ポンドはボラティリティが高い通貨であるため、この通貨が絡む通貨ペアを取引する場合には注意が必要である。
米国に関しては、本日は鉱工業生産指数(鉱工業生産指数・設備稼働率)とミシガン大学消費者信頼感指数が発表される。仮に予想を上振れると、円安がさらに進む可能性がある。一方、予想を下振れた場合はドル円の上値抑制要因になる可能性がある。
なお、冒頭に書いたとおり、本日の東京時間では1ドル109円40銭を試す動きになっている。日経平均株価や上海総合指数も堅調に推移しており、ドル円にとって短期的には追い風となる。ただ、既に書いたとおり、ドル円の上値抑制要因があることから、今のところ1ドル109円30銭近辺まで押し戻されやすい状態である。
テクニカル的には、一時間足で見た場合、ローソク足はまだ一目均衡表の雲の上にあり、ボリンジャーバンドはバンドウォークが発生しているため、強い上昇トレンドにある。東京時間では、109円40銭を目指した動きになると考えられるが、1ドル109円30銭近辺でのもみ合いが予想されるため、ここがひとまずの支持線になると考えられる。
ここを割り込んだ場合は、短期的には1ドル109円10銭前後が次の支持線として意識され、次に1ドル109円00銭前が支持線となってもみ合いになると考えられる。反対に1ドル109円40銭を突破して上昇した場合、1月3日の暴落前の水準である1ドル109円65銭前後を目指して動きだすとみられるが、1ドル109円50銭近辺で戻り売りがあると予想される。いずれにせよ、ラウンドナンバー付近でのもみ合いが予想されることに注意したい(元ネット系証券会社社員 佐藤真奈美氏)。
本日の経済指標カレンダー
1月18日(金)
13:30 |
(日) 11月 鉱工業生産・確報値 [前月比] 前回:-1.1% |
---|---|
13:30 |
(日) 11月 鉱工業生産・確報値 [前年同月比] 前回:1.4% |
13:30 |
(日) 11月 設備稼働率 [前月比] 前回:4.0% |
16:30 |
(スイス) 12月 生産者輸入価格 [前月比] 前回:-0.3% 今回予想:-0.2% |
18:00 |
(欧) 11月 経常収支(季調済) 前回:230億ユーロ |
18:00 |
(欧) 11月 経常収支(季調前) 前回:266億ユーロ |
18:30 |
(英) 12月 小売売上高 [前月比] 前回:1.4% 今回予想:-0.8% |
18:30 |
(英) 12月 小売売上高 [前年同月比] 前回:3.6% 今回予想:3.5% |
18:30 |
(英) 12月 小売売上高(除自動車) [前月比] 前回:1.2% 今回予想:-0.8% |
18:30 |
(英) 12月 小売売上高(除自動車) [前年同月比] 前回:3.8% 今回予想:3.8% |
22:30 |
(加) 11月 対カナダ証券投資額 前回:39.8億カナダドル |
22:30 |
(加) 12月 消費者物価指数(CPI) [前月比] 前回:-0.4% 今回予想:-0.3% |
22:30 |
(加) 12月 消費者物価指数(CPI) [前年同月比] 前回:1.7% 今回予想:1.7% |
23:15 |
(米) 12月 鉱工業生産 [前月比] 前回:0.6% 今回予想:0.2% |
23:15 |
(米) 12月 設備稼働率 前回:78.5% 今回予想:78.5% |
24:00 |
(米) 1月 ミシガン大学消費者態度指数・速報値 前回:98.3 今回予想:96.0 |
(元ネット系証券会社社員 佐藤真奈美氏)
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