【FX予想】ポンドの2019年見通しやトレード戦略を徹底解説
- 更新日: 2019/02/27
ポンド(GBP)2019年の見通し
- 今年のポンドの注目ポイントは、EU離脱。合意ありでも合意なしでも、ポンドは下降トレンドに。
ポンドと言えば、「暴れ馬」の別名のとおり、ボラティリティの高さで有名な通貨です。小さな材料であっても、ドルや円に比べて大きく動くことから、トレーダーに非常に人気があります。
そんなポンドの今年の大きなテーマはEU離脱です。2016年に英国のEU離脱が決まりましたが、今年3月のEU離脱を控え、これまで以上に注目が集まっています。
ただ、EU離脱に至る道筋は平坦なものでは決してなく、どのように離脱するのか明確にならないまま、離脱の日が刻一刻と迫ってきています。
今後も混迷必至となるとみられるポンドの今年の注目ポイントや、EU離脱後のシナリオについて解説します。
この記事の目次
2019年ポンド(GBP)の見通しは?
英国のGDPは、2018年1月-3月期は前期比0.1%、4月-6月期は同0.4%、7月-9月期は同0.6%と緩やかながら拡大が続いていましたが、10-12月期には同0.2%と拡大が縮小しました。その結果、2018年通年のGDP成長率は1.4%となっています。
一方、失業率は改善し、今年1月に英政府統計局が発表した失業率(ILO方式)は4%と、1975年以来の最低に並んでいます。さらに賃金に関しても、2018年9月-11月の賞与を除く平均賃金は前年同期比3.3%増と、2008年の終わり以来の高い伸びとなりました。
このように、英国では失業率や賃金に関しては好調が続いていますが、企業の設備投資は英国のEU離脱を前に低下しています。
英・設備投資確報値は、2018年1月-3月期が前期比-0.2%、4月-6月期が同-0.7%、7月-9月期が同-1.1%と、徐々に設備投資を手控える向きが強まってきているのです。冒頭で書いた英国のGDPの低下は、このことも影響していると考えられます。
また、英国のGDP低下には、EU離脱による英企業の設備投資の手控え以外にも、米中貿易摩擦といった外的要因が影響したほか、賃金上昇圧力やeコマースの普及に伴う英・大手小売りチェーンの倒産や自動車産業の販売不振なども影響したと考えられます。
BOEは昨年11月に賃金上昇の改善と国内のコスト圧力を指摘し、これまでの予想よりも早い段階で景気が過熱する可能性があり、今後数年に従来の想定よりも速いペースでの利上げが必要になる可能性を示唆しています。
ただ、この見解はEU離脱がスムーズに進むことが前提となっているものであることから、市場の見方は懐疑的です。
それを裏付けるように、2月14日にBOE金融政策委員会のブリハ委員が、英国では年1回程度の25bpの利上げが適切となる可能性があるとの認識を示しています。
ただし、これは、世界経済のこれ以上の大幅な減速がなく、英国がEU離脱に当たり移行期間を確保し、賃金の伸び率が物価上昇圧力をかけた場合という条件が付くとしています。そのため、同委員は、年1回の利上げでも多すぎるかもしれないとの見方を同時に示しています。
なお、2018年の英国の消費者物価指数は原油安の影響からやや伸び悩んでいます。2月13日に発表した英国の今年1月の消費者物価指数は前期比1.9%の上昇となり2年ぶりの2%割れとなりました。
原油安と年初から適用された電力・ガス料金の上限規制も影響したとみられています。これにより、英国の物価上昇率は3ヶ月連続で縮小を続けていることになります。
ブリハBOE金融政策委員の発言を裏付けることとなった1月の消費者物価指数の結果から、BOEが予定している2019年の2回の利上げが実施されるかどうかは、いっそう不透明になると考えられています。
これまでは、今年の利上げは1回にとどまるのではないかとの見方が強まっていましたが、今回の結果により、利上げを見送る可能性も出てきたのです。
景気減速が懸念される英国では、目下のところ、3月29日に予定されているEU離脱に注目が集まっています。
英国のEU離脱に関しては、ニュースなどで報じられているとおり、EUの関税ルールに縛られる可能性がある現在のEUとの協定案が、1月の議会採決で否決されて以降、メイ首相はEUに対し再交渉を求めていますが、EU側は、条件変更は認めないとして、再交渉に応じない構えを崩していません。
英国のEU離脱の日が迫る中、どのようなスキームで離脱するのか明確にならないまま、依然として混迷が続いています。
そのため、離脱日延期の可能性に注目が集まっていますが、現在のところ、離脱が延期される可能性よりも、このまま合意なき離脱になる可能性が高い状態です。
ただ、市場はそれを警戒しており、もしこのまま合意なき離脱となる可能性が高まれば、離脱の日となる3月29日に向けて、ポンドは大幅に下落する恐れがあります。その場合、ドルや円の暴騰を引き起こす可能性があることに注意が必要です。
離脱日が延期された場合や、合意あり離脱となった場合は、ポンドはいったん上昇しますが、EU離脱後の英国の景気減速などから、やがて緩やかな下降トレンドになると考えられます。
今年のポンドの注目材料
- 3月29日のEU離脱の動向
- 英国の経済指標の動向
- BOEの利上げ観測
主な上昇要因
国際情勢 | 米中貿易戦争の激化 |
---|---|
政治 | EU離脱が合意あり離脱となった場合 |
金融政策 | BOEの利上げ |
経済指標 | GDP、購買者担当指数(PMI)、インフレ率等英国の経済指標の上振れ |
その他 | 英国債の下落、英国株の上昇 |
合意あり離脱となった場合や離脱日が延期された場合、市場の不安はいったん後退するとみられます。その場合、ポンド円は一時的に急激な円安となり、ポンドドルは暴騰する可能性があります。
ただ、現在の英国の経済指標が冴えないものとなっているため、利上げ観測は後退しつつあります。仮にインフレ率やGDP等英国の経済指標が回復傾向を示すようであれば、年内の利上げ期待が支えとなって、ポンドは緩やかに持ち直すものと考えられます。ただ、合意あり離脱をした場合でも、英国のGDPは15年間で3.9%程減少することを英国政府は予想しています。そのため、ポンド円は徐々に円高傾向に、ポンドドルは徐々にドル高傾向になることが予想されます。
反対に、EU離脱後に経済指標の結果が冴えない状態が続いた場合は、英国の景気後退が鮮明になったとして、ポンドの下押し要因となります。場合によってはポンドが急落することもあるかもしれません。この場合、ポンド安地合いが続くものとみられます。
主な下落要因
国際情勢 | 北アイルランドでのテロ、暴動 |
---|---|
政治 | EU離脱が合意なし離脱となった場合 |
金融政策 | BOEによる利上げの延期または中止 |
経済指標 | GDP、購買者担当指数(PMI) インフレ率等英国の経済指標の下振れ |
その他 | 英国債の上昇、英国株の下落 |
合意なき離脱をした場合、ポンドは暴落することが考えられます。なお、その場合、BOEはポンドの為替レートが最大で25%ほど下落するとの予測をしています。
ポンド暴落による市場の混乱を懸念し、ドイツのアルトマイヤー経済相は、英国に時間的な余裕を与えるために離脱延長を認めるべきとの発言をするなど、EU側も英国のEU離脱時期の延期について交渉に応じる構えを見せていました。
しかし、1月29日のEU離脱修正案の採決時にEU離脱延期を可能にする動議が否決されたため、現在は離脱延期の可能性は後退しています。
ポンドを取引する際のポイントとは?
ここからはポンドの取引に関する部分を解説していきます。
取引におけるメリット
ポンドを取引するうえでのメリットとしては以下のようなことが挙げられます。
メリット1:メジャー通貨のため、取り扱い会社が多い
FX会社によって取り扱っている通貨ペアは異なり、メキシコペソなどのマイナー通貨の場合は取り扱うFX会社が少なく、選択肢が限られてきます。
しかしポンドはメジャー通貨の一つであるため、ポンド円やポンドドルの通貨ペアはほとんどのFX会社で取り扱っています。流通量も多いので、取引しやすいでしょう。
メリット2:ポンド円のスプレッドは比較的狭い
FX会社に実質的に支払う手数料となるスプレッドは、FX会社や通貨ペアごとに異なっています。
マイナーな通貨になると通貨ペアのスプレッドも広くなってしまうため、取引ではコスト面で不利になることが多いのですが、ポンド円のスプレッドは比較的狭い方ですので、コスト面では有利な方であると言えます。
メリット3:値動きが大きい分、短期間での利益獲得が狙える
ポンド円やポンドドルなど、ポンドが絡む通貨ペアの値動きは、1日のうちに3円動くこともあるほど、かなり激しいのが特徴です。
そのため安定性に欠ける一方、短い期間で大きな利益を狙うことができる可能性があります。特にデイトレードなど、1日に何度も取引を行う際には狙い目となるでしょう。
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36円 | -15円 | 43円 |
ポンドをFX取引するデメリット
ポンドの取引に関しては、下記のようなデメリットが考えられるため、取引の際には注意しましょう。
デメリット1:値動きが大きい分、短時間で損失が拡大しやすい
ポンド円やポンドドルなどの通貨ペアは値動きが大きいため、短期間での利益獲得を狙うことができる一方、値動きが大きい分、損失が出た場合はわずかの間でも拡大する可能性があります。
取引の際は、どちらに値が動くのかをしっかりと見極めなければ、想定以上の損失が出る可能性もあるので気を付けましょう。
デメリット2:今年は英国のEU離脱が控えているため、値動きが読みづらく、ボラティリティが普段以上に高くなる
ポンドのボラティリティはもともと高いのですが、今年は英国のEU離脱という大きな出来事が控えています。離脱後の見通しが立てづらい分、値動きが読みづらくなっており、ボラティリティも普段以上に高くなっています。
下がると思えば上がる、上がると思えば下がるといった値動きが随所にみられるので、安定性に欠け、初心者には取引の難しい通貨であると言えます。
デメリット3:どのような離脱をするのか先が見通せず、シナリオを立てづらい
すでに書いたとおり、英国のEU離脱については、合意あり離脱となるのか、あるいは、合意なき離脱となるのかがはっきりとしておらず、どのようなスキームで離脱するのか見通しが立っていません。そのため、この先のシナリオを立てるのが難しい状態になっています。
合意なき離脱をした場合の影響は、英国だけにとどまらず、世界中に及ぶと予想されていることから、不安視されています。
今後のポンドのトレードで取るべき戦略
今後、ポンドのトレードではどのような戦略をとるべきでしょうか?ポイント別に考えてみましょう。
EU離脱の合意について
今年のポンドにおける最重要のテーマは、何といってもEU離脱です。離脱そのものは決定的となっていますが、合意あり離脱になるのか、それとも合意なき離脱をするのかで今後のシナリオが大きく変わってきます。
EU離脱の時期が延期となる可能性については、現在のところ可能性は低いと思われます。そのため、英国のEU離脱日である3月29日までの間はポンドのボラティリティが大きくなり、EU離脱交渉を巡るニュースが出るたびに、ポンドが絡む通貨ペアは乱高下することが考えられます。
EUを離脱した後は、英国の経済指標の動向に注目が必要です。現状、英国の経済指標は冴えない結果が続いていて、今後も経済指標の低下が続くようであれば、現状、今年1回とみられている利上げ観測が後退し、年内は利上げなしとなる可能性が高まるため、ポンド売りが一気に進む恐れがあります。
一方、EU離脱後に経済指標の回復が確認できた場合は、利上げ観測からポンドは買われ、離脱後のポンドの下落から緩やかに回復することが考えられます。
ポンドドルの変化
ポンドに関しては、2016年10月と2017年1月に1ポンド1.20ドルを割り込んでいます。これは、1985年以来の水準のポンド安です。この時も、EU離脱に対する懸念が広がったことが大暴落の原因となりました。
英国のEU離脱が合意なき離脱となったら、最悪の場合は1985年の最安値である1.10ドルを割り込む水準までポンド安が進む可能性があります。
合意あり離脱であれば、一時的にポンドは暴騰すると考えられますが、暴落した場合に比べるとその割合は限定的なものになるでしょう。
まとめ : ポンドは楽観視できない状態が続く
ポンドはEU離脱という不安材料を抱えていることから、楽観視できない状態が続くことになるでしょう。EU離脱が合意なし離脱となった時には、ポンドは大暴落し、市場に混乱が生じる可能性もあります。
また、合意あり離脱となった場合は、ポンドが一時的に暴騰する可能性もありますが、そのままポンド高となるかといえばそうとは限りません。その後の政治動向や経済指標の動向に、ポンドは翻弄される展開となります。年内の利上げの可能性が高まるのか、あるいは後退するのかで、ポンドの今後の値動きは大きく変わってきます。
なお、EU離脱までは、関連ニュースが流れるたびに、ポンドは大きく反応するとみられます。現状、EU離脱の延期が見込めないため、3月29日にEU離脱となることを前提としてトレードするべきです。ポンドの取引の際は、早めの判断とリスク管理を徹底しましょう。
また、ポンドのボラティリティがこれまで以上に大きくなる可能性が高いことから、資金的な余裕を持って取引したほうがいいでしょう。
今年のポンドの注目材料
- 3月29日のEU離脱の動向英国の経済指標の動向BOEの利上げ観測
主な上昇要因
国際情勢 | 米中貿易戦争の激化 |
---|---|
政治 | EU離脱が合意あり離脱となった場合 |
金融政策 | BOEの利上げ |
経済指標 | GDP、購買者担当指数(PMI)、インフレ率等英国の経済指標の上振れ |
その他 | 英国債の下落、英国株の上昇 |
主な下落要因
国際情勢 | 北アイルランドでのテロ、暴動 |
---|---|
政治 | EU離脱が合意なし離脱となった場合 |
金融政策 | BOEによる利上げの延期または中止 |
経済指標 | GDP、購買者担当指数(PMI) インフレ率等英国の経済指標の下振れ |
その他 | 英国債の上昇、英国株の下落 |