FXの追証・マージンコールとは?強制ロスカットを避ける3つの方法
- 更新日: 2020/12/01
「FXをする上で怖いことと言えば?」という問いに、多くのFXトレーダーは「強制ロスカット」と答えるのではないでしょうか。しばしば恐怖の対象とされる強制ロスカットですが、本来は顧客資金を守る観点からFX会社によって執行される制度です。
似た制度として「マージンコール」と呼ばれる仕組みがあります。FX初心者の方は、強制ロスカットと混同してしまっているケースも多いです。
マージンコールも、FXトレーダーが証拠金を大きく上回るような損失を出さないための仕組みという点では強制ロスカットと同じですが、それ自体が強制決済を行うわけではなく、証拠金に対する含み損が大きくなりすぎた際に、追証(追加証拠金)を求める警告のことを言います。
FX初心者の中には、ロスカットにばかり注意がいき、マージンコールはそこまで意識していなかったり、マージンコールという言葉は知っているけど、発生のタイミングや詳しい仕組みなどはよく分からないという人も多いです。
しかしながら、マージンコールの仕組みをしっかり理解していれば、強制ロスカットを回避することも、それ以上の損失の拡大を防ぐことも可能になります。FX初心者の方にこそ、実際のトレードを始める前に理解を深めておいてほしい重要な仕組みです。そこで今回は、
- 「マージンコールが何なのか?」
- 「マージンコールが発生したら、どうすればいいのか?」
- 「マージンコールが発生しないように取引するには?」
- 「追証の仕組み」
といった内容を中心に、マージンコールが何なのかを説明します。また、マージンコールが発生しないためにトレードではどのようなことを心がければいいのかについても合わせて説明していきますので、FX初心者の方もそうでない方も、ぜひ参考にして下さい。
この記事の目次
追証とは?
追証(おいしょう)は「追加証拠金」の略で、保有しているポジションに対し必要証拠金が一定の水準を下回った場合、トレーダーに要求される証拠金のことです。追証となった場合、FX会社からマージンコールがかけられ、メールなどで通知されます。マージンコールがかけられる水準はそれぞれのFX会社で異なります。
マージンコールとは
「マージンコール」という言葉自体をはじめて聞く投資初心者の方のため、まずはマージンコールの基本的な仕組み、そしてその必要性について説明していきます。
証拠金以上の取引が可能なFX
FXの魅力と言えば、小額でもレバレッジをかけることで差し入れた証拠金以上の金額でトレードできる点ですね。現在は、国内FX業者で25倍、海外のFX業者だと200倍、300倍といった高レバレッジでの取引が可能な会社もあります。(国内のレバレッジは、今後25倍→10倍になる可能性があります)
単純に25倍のレバレッジをかければ、1万円の証拠金を差し入れて25万円までの取引ができるようになるということです。大きく利益がとれる局面では有効活用するべき仕組みですが、損失が出た場合、差入れた証拠金額以上の損失が発生する可能性もありますので、計画性なくレバレッジをかけすぎるのは危険です。
そうしてリスク管理ができていない取引を繰り返し、損失が膨らみすぎると、時には取引口座がマイナスになり、いわゆる「赤残」と呼ばれる状態になることがあります。赤残は、FX会社に借金をしている状態で、指定の期日までに不足金の支払いを求める連絡がFX会社から届きます。
「もし不足金の支払いを行わないとどうなるのか?」という疑問を持たれる方が多いのですが、FX会社の期日を越えても不足金が支払われない場合、遅延損害金を上乗せした形で不足金を支払わなくてはなりませんので注意が必要です。
なお、この遅延損害金については、消費者契約法9条2号に定められた遅延損害金の最高利率である年率14.6%としているFX会社が多いようです。こうした赤残を含む損失の拡大を防ぐために、FXにはマージンコールというシステムがあります。
マージンコールはロスカット一歩手前の状態
マージンコールは、追証が必要になった状態で発せられる告知のことです。マージンコールが来るということは、一言で言えば、ロスカット一歩手前の状態にあることを示しています。
サッカーで例えると、イエローカードを出されている状態です。強制的に即退場というわけではありませんが、証拠金を追加で入金しなければ、取引を継続できません。
マージンコールが発生する基準はFX会社によって異なりますが、ロスカットよりも高い基準の証拠金維持率が設定されている場合がほとんどです。
FX会社ごとのマージンコールの設定例
FX業者 | マージンコール発動 (証拠金維持率・規定率) |
ロスカット発動 (証拠金維持率・規定率) |
---|---|---|
DMM.com証券 | 100%未満 | 50%以下 |
GMOクリック証券 | 100%未満 | 50%未満 |
YJFX! | 100%未満 | 50%未満 |
セントラル短資FX | 125%未満 | 100%未満 |
また、マージンコールのかけ方やタイミングは、FX会社によって違います。大まかに分けると、
- ロールオーバー時など、毎日決まった時刻にマージンコールの判定が行われ、その時点でFX会社の方で定めたマージンコールの基準に達していた場合、メールなどで通知される。証拠金維持率がそのまま回復しなければ、マージンカットと呼ばれる反対売買による強制決済が行われる。
- 決められた証拠金維持率を下回った段階でまずはマージンコールが行われ、メールなどで追加入金を促す通知が来る。その後、そのまま証拠金維持率が回復せずにさらに証拠金維持率が低下すると、ロスカットラインに達した段階でロスカットされてしまう。
- マージンコール自体がそもそも設定されていない。
という3パターンに分けることができます。
マージンコールがかかったらどうすればよいか
基本的にマージンコールはかからないに越したことはありません。しかしながら、FXトレードを重ねていれば、やむを得ずマージンコールがかかることも想定しなければなりません。
どのタイミングでマージンコールがかかるかを考える計算方法と、マージンコールがかかってしまった場合の対処法を説明していきます。
マージンコールが証拠金維持率100%の場合
1ドル100円の時にレバレッジ10倍で1万通貨単位購入したとします。この場合の必要証拠金は 100×10,000÷10=10万円 となります。
購入の際に口座に入金した証拠金額が20万円であれば、この時点での証拠金維持率は 200,000÷100,000×100=200 で、200%となります。
これが100%になるということは、損失が発生し、口座に入金した20万円の証拠金が、10万円まで目減りしたことになります。
つまり、20万円-10万円=10万円ということで、10万円の損失が発生した時に証拠金が10万円まで減ることになります。そして、その時の為替レートは、200,000-(100-X)×10,000=100,000 なので X=90 となった時、ということになります。
円高が進んで1ドル90円になった時はまだマージンコールは発生しませんが、1ドル90円よりも円高が進行するとマージンコールが発生します。
マージンコールが発生すると、アラートメールが送られてきます。そこには「証拠金維持率○%を下回ったので、追加入金かポジションの決済をお願いします」といった趣旨の内容が記載されています。メールに記載のるとおりに追加入金をすれば、証拠金維持率は回復し、マージンコールも解除されます。
マージンコールが証拠金維持率80%の場合
1ドル100円の時にレバレッジ25倍で1万通貨単位購入したとします。この場合の必要証拠金は 100×10,000÷25=4万円 となります。
購入の際に口座に入金した証拠金額が10万円であれば、この時点での証拠金維持率は 100,000÷40,000×100=250 で、250%となります。
これが80%になるということは、損失が発生して10万円の証拠金が3万2千円まで目減りした時です。
つまり、6万8千円の損失が発生した時なので、その時の為替レートは、100,000-(100-X)×10,000=32,000となり X=93.2 となります。
円高が進んで1ドル93.2円になった時はまだマージンコールが発生しませんが、1ドル93.2円よりも円高が進行すると、マージンコールが発生します。
上記のとおり、マージンコールが発生するとアラートメールが送られてきます。もしこの時に他のポジションを持っていれば、それを決済することで証拠金維持率を回復することもできます。
マージンコールを放っておくとどうなるか
為替レートが回復して証拠金維持率が回復すれば、マージンコールを放置していてもマージンカット(ロスカット)されることはありません。
しかし、そのまま証拠金維持率が回復せずに、マージンカットが執行されるレベルに落ち込んだ場合は、執行の対象となります。
マージンカットが無いFX会社の場合だと、たとえマージンコールを放置したとしても、そのまま為替レートが回復した場合は特に問題ありません。しかし、そのまま為替レートが不利な方向に進んで証拠金維持率がさらに低下し、ロスカットラインを下回る段階まで進むと、ロスカットが執行されてしまいます。
ロスカットが執行されてしまうと、為替相場の状況によってはレートが大きく飛ぶことがあります。ロスカットは成行注文で執行されるので、自分が想定したよりも不利なレートで約定することもあります。
約定したレートによっては、最初の方でも書いたように赤残が発生する可能性があり、FX会社に借金をする状態になってしまうこともあります。
もし大きなロット数を持って証拠金額ギリギリの状態で取引していた場合、相場の状況によってはその赤残が大きな金額になることも考えられます。そうならないためにも、マージンコールの段階で追加入金をしておくに越したことはありません。
マージンコールがかからないようにするために
これまで、マージンコールの対処法について紹介しましたが、そもそもマージンコールがかからないようにできれば、それに越したことはありません。
しかしながらマージンコールは、短期売買でも長期売買でも、取引の仕方次第ではかかる時はかかってしまいます。マージンコールがかからないトレードに必要なポイントを紹介していきます。
1. 適切な損切りをする
マージンコールがかかる主な原因は、含み損です。
証拠金額と取引ロット数にもよりますが、マージンコールが発生するラインまで損失が拡大するのを放っておくのは得策ではありません。そのまま放置しつづけると、いずれロスカットになってしまいます。
なぜ含み損が大きくなってしまうのか、原因としては適切な損切ができていないことが挙げられます。「いずれレートが回復するかもしれない」と考えて、ズルズルと損失を抱えるポジションをそのままにしてしまいがちな人が多いのです。
それでレートが回復すればいいのですが、そうならない場合も多々あるので、そうなるとさらに損失が大きくなってしまいます。
マージンコールが発生するまで損失が拡大するということは、そのポジションはそもそも売買の判断を間違えている可能性が高いです。そんな時こそ、早めに損切りして反対方向にポジションを建て直すことが大事です。
マージンコールやロスカットを発生させないために、トレードの前に自分なりの損切りラインをしっかり決めておきましょう。もし損切りした後にレートが回復しても、「もったいない」と思わずに、その時に再び新規ポジションを建て直せばいいだけです。
売買の方向を間違えたまま損失を拡大させるよりも、早めの損切で一度ポジションを解消し、もう一度最初から相場分析をきちんとした上でトレードルールを決め、改めて取引した方がいい結果に繋がることも多いです。そうすることで、マージンコール発生の可能性を大幅に抑えることができます。
2. 資金は多めにする
FXはレバレッジをかけられるのが大きな特徴ですが、必要証拠金ギリギリで取引をする場合と、必要証拠金よりも大きな金額で余力を持って取引をする場合とでは、後者の方が長い期間為替変動に耐えられます。
同じように、レバレッジ10倍、1ドル100円の時にロングポジションを10,000通貨単位取引する場合であっても、証拠金額100万円で取引するのと10万円で取引するのとでは、耐えられる為替変動の幅が異なります。
例えば、マージンコール100%の時、証拠金額100万円で取引している場合は、1,000,000-(100-X)×10,000=100,000 となるので X=10 です。つまり、1ドル10円を下回った時にマージンコールが発生しますが、まずそんなことは起こりません。
一方、レバレッジ10倍、1ドル100円の時にロングポジションを10,000通貨単位取引するとして、証拠金額20万円で取引した場合は200,000-(100-X)×10,000=100,000 となるので X=90 です。
つまり、1ドル90円を下回った時にマージンコールが発生します。最初の例と違い、これくらいの為替変動はあり得る話です。
このことから分かるように、証拠金額が大きければ大きいほど大きな為替変動に耐えることができます。上の例で言えば、証拠金額100万円の場合は90円ものあり得ないほどの超円高が進んだ場合のみマージンコールがかかります。
一方、証拠金額20万円の場合は10円円高が進むとマージンコールがかかります。そのため、証拠金額100万円の方がそれだけ大きな為替変動に耐えることができます。
つまり、同じロット数で取引する場合は証拠金額が大きければ大きいほど、大きな為替変動に耐えられるということになります。
3. ロット数は大きくしない
ロット数の大小は為替変動に直結します。
例えば1ロット10,000通貨単位としたときに1ロット持った場合、1円の為替変動が1万円の損益となってしまいます。これが2ロットであれば1円の為替変動が2万円の損益となります。このことから分かるとおり、ロット数が大きければ大きいほど損益は大きくなります。
マージンコールは、FX会社で定めた証拠金維持率を下回った場合に発動されます。マージンコールを発生させないようにするには、証拠金維持率が高い水準を保てるようにするのが一番です。そのためには、ロット数を少なくする必要があります。
レバレッジ10倍、1ドル100円の時にロングポジションを10,000通貨単位取引する場合を例とします。この場合、証拠金額50万円で取引すると、500,000-(100-X)×10,000=100,000 となるので X=60 となります。つまり、1ドル60円を下回った時にマージンコールが発生します。
このことから分かるように、保有ポジションが1ロットであれば 100-60=40 で、40円の為替変動に耐えることができます。
同じく、レバレッジ10倍、1ドル100円の時にロングポジションを持つとして、この時に100,000通貨単位で取引した場合は、500,000-(100-X)×100,000=100,000 となるので X=96 となります。つまり、1ドル96円を下回った時にマージンコールが発生します。
このことから分かるように、保有ポジションが10ロットの場合は 100-96=4 で、4円の為替変動に耐えられることになります。
同じ証拠金額で取引した場合は、取引ロット数が多くなればなるほど耐えられる為替変動は小さくなってしまいます。そのため、同じ証拠金額の場合は大きなロット数で取引するほど、マージンコールが発生する可能性が高くなってしまいます。
つまり、ロット数を大きくしたいのであればそれに比例して証拠金額も相応に大きくする必要がある、ということです。
おすすめのFX会社
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まとめ
マージンコールはトレーダーが損をしないように、損失を一定以内に抑えるための仕組みです。しかし、取引をしている中でレートの回復を待ちたいと考えている人にとっては、それを邪魔する仕組みのように感じられることもあります。
マージンコールを防ぐためにはいくつかの方法があります。資金を増やすことやレバレッジを抑えること、または取引するロット数を少なくすることです。マージンコールが発生しないように取引するためには、なるべく余裕を持って取引を行うことが重要となります。
余剰資金の少ない、必要証拠金ぎりぎりでの取引をする場合は、わずかな為替変動に耐え切ることができずにマージンコールが発生してしまいます。しっかり利益を上げていきたければ、マージンコールがかかる前に自分から損切りして、可能な限り損失を抑えてしまうことも重要です。
損失が発生しても自分が許容できる範囲内に抑えて、マージンコールが発生するまで待たないようにしましょう。
FX初心者の方で、FXの基本的な知識について知りたい方は、以下の記事も参考にしていただければ幸いです。