【これで完璧!】ニュージーランドの経済指標の見方、連動する他国の指標も完全網羅
- 更新日: 2019/07/02
NZランドドルは業界では「キウイ」とも呼ばれていて、軽く親近感を持っている人も多いんじゃないでしょうか。
しかし、親近感と高金利だからなんとなく取引をしているだけで、ニュージーランド経済やその動向を示す経済指標について正しく理解していない人もいるかもしれません。
ニュージーランドは好きなので、NZドル取引をしてるよ!
NZドルは持ってるけど、発表が早朝だし経済指標はスルーしてます。
ニュージーランドの経済指標って、なんか分かりにくいんだよね。
NZドルは確かに魅力的な通貨ですが、しっかりとその経済を理解したうえで取引したほうが効果的です。
今回は経済指標という切り口から、ニュージーランドの経済、為替の動向を正しく読み取るためのコツを解説をしていきます。
この記事の目次
NZドルを経済指標から読み解こう!
ニュージーランドはオーストラリアの南東に位置する島国で、経済規模は大きくはありませんが、近年も安定した経済成長を続けている国です。
ニュージーランドでは酪農が主要の輸出産業で、とくに中国やオーストラリア向けの輸出が多くなっています。
通貨のNZドルはもともとは高金利通貨として有名でしたが、現状は政策金利は1.75%と、過去最低の水準となっています(2018年9月現在)。
今後さらに利下げが実施される可能性もあり、金融政策の動向には注目が集まっています。
そして、この金融政策がどうなっていくかを占ううえで、今回スポットライトを当てる“経済指標”が非常に重要な意味を持ちます。
この経済指標が為替に影響を与えるかが分かると、NZドルが動いた理由も理解しやすくなるでしょう。
重要度順! ニュージーランドの主な経済指標一覧
早速ですが、ニュージーランドの経済指標を重要度の高いものから順番に、1つずつ解説をしていきます。
冒頭でニュージーランドの大まかな経済環境に触れましたが、それとリンクさせながら見ていくとイメージしやすくなると思います。
重要度[大] RBNZ政策金利発表
RBNZというのはニュージーランド準備銀行の略で、つまりは金融政策をつかさどる中央銀行です。
RBNZは年8回、金融政策決定会合を行い、その中で政策金利をはじめとるす金融政策を決定します。
ちなみに、RBNZ政策金利発表が行われる時間帯は早朝の5時となっていて、早起きしないとリアルタイムで見ることはできません。
また、この時間帯は為替市場の流動性が低いので、思わぬ動きにつながっていくリスクにも念のため警戒しておきましょう。
中央銀行の目的は、物価の安定や景気の調整しながら、経済の安定的に成長させることです。
そのために、例えば物価が目標よりも低い時には、利下げという金融緩和策を行い、物価を上昇させるような働きかけを行います。金融緩和策が実施されると、通貨は下落するのが一般的です。
ニュージーランドはリーマンショック以降、8%以上あった金利は1.75%と大きく下げてきています(2018年9月現在)。
その間、大きな流れでは利下げですが、実は2回ほど利上げをしたこともあります。
今後もさらなる利下げにまずは注意したいところですが、状況によっては利上げになる可能性も一応頭には入れておきたいところです。
これらの金融政策に対する市場の思惑の変化によって、NZドルは大きく上がったり下がったりすることになります。
そのため、RBNZの動向は非常に注目されており、併せて市場の思惑につながりやすいRBNZ総裁などの要人発言についても、しっかりと注意しておくことをおすすめします。
補足:金融政策は市場の思惑に注目しよう
ここで少し補足ですが、相場においてRBNZが利下げを発表したからといって、「さあ、NZドルを売るぞ」と反応すればいいというものではありません。
考え方としては間違っていませんが、下落を狙った取引をするのにはすでに手遅れかもしれません。
というのは、市場には常にRBNZの金融政策に対する予想をしていて、その予想を織り込んで相場は動いているからです。
もしRBNZの利下げが濃厚だと市場が見ていれば、発表前にそれを織り込んで下落が進行してしまっていることも十分に考えられます。
その状態で予想通りの結果になってから反応しても、おいしいところは全部持っていかれてしまいます。
利益確定による相場の反動の仕方次第では、むしろ大きく逆行される可能性すらあるわけです。
つまり、大事になってくるのは、あらかじめそういった市場の思惑を知っておくことになるわけです。
そのためにはチャート分析はもちろんですが、加えて、RBNZの金融政策につながる経済指標をウォッチしていくことが大事になります。
これをしっかりと意識したうえで、次以降の経済指標を理解していってほしいと思います!
重要度[大] 雇用統計(失業率、就業者数増減)
ニュージーランド統計局は四半期ごとに、労働市場についての状況を表す雇用統計を発表しています。
発表タイミングは対象となる四半期が終了してから翌々月上旬で、発表時間は朝の7時45分となっています。
労働市場がどうなっているかは経済動向を見るうえで重要で、雇用統計はRBNZが金融政策を決定するうえでの重要な情報の1つでもあります。
そのため、市場からの注目度は高いものがあり、為替相場も大きく動きます。
雇用統計では失業率や就業者数増減が注目されますが、ニュージーランドの失業率はリーマンショック以降6%を超えたこともありましたが、その後経済が安定するにつれ下落しており、現在は4%台にまで入ってきています(2018年9月現在)。
失業率を見るあたっては、ひとまずこのあたりを目安に覚えておくといいでしょう。
重要度[中] 四半期GDP(国内総生産)
GDPというのは、国内で生産されたモノやサービスなどの付加価値の合計で、直接的に経済の規模を表す経済指標です。FXでは前期比・前年比の上昇率で見る機会が多くなると思いますが、これは経済成長率ということになります。
経済をトータルで表したもので、金融政策を決めるうえでもとても重要な位置付けです。
発表するのはニュージーランド統計局で、四半期ごとに発表が行われることになっています。
発表タイミングは対象となる四半期が終了してから3ヶ月目の下旬で、発表時間は朝の7時45分というかたちです。
ここのところのニュージーランドの経済成長率は、前年比で2%台後半を推移しており良好な状態です。
この成長を減速せずに継続していけるかどうかというのが、今後の焦点となっていくと考えられます。
この点、ニュージーランドは中国やオーストラリアとのつながりが深く、外部の影響も受けやすい傾向があります。
中国は米中貿易摩擦なども抱えていますが、そういったところがリスクになる可能性は意識しておくほうがいいでしょう。
重要度[中] 四半期CPI(消費者物価指数)
CPIは消費者物価の状況を表した経済指標で、これも前期比・前年比での上昇率で目にすることが多いと思われます。
発表するのはニュージーランド統計局で、四半期ごとに発表対象の四半期が終わった翌月中旬に発表されます。なお、発表時間は朝の7時45分です。
RBNZはインフレ率(CPIの上昇率)の目標を前年比1~3%に設定しており、この目標を達成するように金融政策を調整しています。
そのため、例えばインフレ率が1%近くまで下落すると金融緩和的な対応、インフレ率が3%近くまで上昇すると金融引き締め的な対応が予想されることになります。
直近では1%台を推移している状態が続いていますが、1%の下限に近づいてくるような局面もありました。
今後はインフレ率がしっかりと上向いていくかが注目され、上向いてこない場合には利下げの実施が現実味を帯びてくることになるでしょう。
重要度[中] 貿易収支
貿易収支は経常収支の内訳項目の1つで、国内の経済主体によるモノの輸出・輸入の金額を集計したものです。
発表はニュージーランド統計局が行っており、対象月の翌月下旬に発表が行われます。なお、発表時間は朝の7時45分です。
ニュージーランドは酪農が盛んで、酪農製品や食肉などを中心に輸出を行っています。輸出相手先としては、中国やオーストラリアが占める割合が多いです。
ニュージーランドにとって貿易は重要ですが、この貿易の状況を貿易収支から読み取ることができます。
もし輸出相手先の経済が下向きとなれば、輸出量が減り、ニュージーランド経済にも波及してくることが考えられます。
とくに中国は米中貿易摩擦という問題も抱えておりリスクを無視できませんが、貿易収支を通じてそういったリスクにも目を光らせておきたいところです。
重要度[中] 小売売上高
小売売上高はニュージーランド統計局が発表している経済指標で、発表は四半期ごと、対象となる四半期が終わってから翌々月中旬に結果が出ます。
基本的に前期比からの上昇率というかたちで表示され、どのくらい増減があったのかという見方になります。なお、発表時間は朝の7時45分です。
小売売上高からは消費者がどれぐらいモノやサービスを買ったかがわかり、その増減からは個人消費の動向が見えてきます。
経済において消費者の動きは重要なので、その動向は金融政策にも影響を与えることになります。
重要度[小] 経常収支
経常収支というのは、国内外の経済主体の資金のやりとりをまとめて集計したものです。
先ほど出てきた貿易収支は経常収支の内訳項目の1つで、経常収支ではそれ以外にも、観光などのサービスに関する部分、海外からの投資に係る収益のやりとりの部分など、より広範囲に資金の行き来を集計しています。なお、発表は貿易収支と同じタイミングです。
注目度はそれほど高くありませんが、経常収支の赤字幅が広がると経済への悪影響も心配されるため、金融政策へも影響を及ぼす可能性もあります。
貿易収支と併せてチェックしておきたい経済指標です。
重要度[小] 製造業売上高
製造業売上高は、製造業の売上高を示した経済指標で、数字は前期比というかたちで表示されます。
発表はニュージーランド統計局が四半期ごとに行っており、対象となる四半期が終わってから3ヶ月目の上旬に結果が出ます。なお、発表時間は朝の7時45分です。
基本的に上昇していればモノがよく売れたことになるので、ニュージーランドの経済のプラス要素になります。
ニュージーランドは酪農が重要な産業であるため、それに関連する業種の動向がとくに注目されます。
重要度[小] 住宅建設許可件数
住宅建設許可件数は、住宅建設の許可が下りた件数を表した経済指標で、前月比というかたちで表示されます。
発表はニュージーランド統計局が月次で行っており、対象月の翌々月下旬に結果が出ます。なお、発表時間は朝の7時45分です。
今後の景気の先行きが良ければ、住宅投資も盛んになっていきます。この経済指標からは住宅がどれだけこれから建ちそうなのかがわかるので、今後の景気を予測していくうえでの有効な参考情報になります。
重要度[小]四半期 PPI(生産者物価指数)
PPIは、生産者の卸売販売価格の物価の状況を表した経済指標で、前期比・前年比の上昇率というかたちで表示されます。
発表はニュージーランド統計局が四半期ごとに行っており、対象となる四半期が終わった翌々月中旬に結果が出ます。なお、発表時間は7時45分です。
PPIはCPIと同様に物価に関する動向を示した数字ですが、CPIが消費者からの視点であるのに対し、PPIは生産者からの視点という点が異なります。
重要度としては金融政策の目標であるCPIのほうが上ですが、PPIも物価動向を多面的に見るうえで有効な経済指標です。
(※)経済指標の発表時間にも触れていますが、すべてニュージーランドが標準時間の場合の日本時間で記載しています。サマータイム適用時においては1時間早くなるので、時間を確認する際には注意するようにしてください。
NZドル取引における経済指標との付き合い方
ニュージーランドの経済指標の特徴は、発表が早朝に集中しているというところです。ニュージーランドのウェリントン市場は世界でもっとも早く朝が来ますが、ニュージーランドは時間帯が日本に比べて早いせいですね。
朝は忙しいので大変かもしれませんが、NZドル取引に欠かせない大切な材料なので、朝活として習慣化してしまうことをおすすめします。
さて、NZドルを取引するのであれば、このニュージーランドの経済指標と合わせて、別の国の経済指標もチェックしておくことが大切です。
まずは地理的にも近い、隣国のオーストラリアの経済指標です。貿易などで関係が深いため、オーストラリアの経済動向はニュージーランドに大きく影響をします。
オーストラリアの経済指標の解説はこちら
そして、忘れてはならないのが中国です。ニュージーランドの輸出先トップは今は中国になっていて、オーストラリア以上に経済的に深い関係があります。
また、オーストラリアと中国の関係も深いため、中国→オーストラリア→ニュージーランドという経路でも影響があります。
中国とオーストラリアの経済指標は10時~11時が多く、リアルタイムでのチェックは難しい人が多いかもしれません。
ただ、NZドル取引では戦略を練るうえで重要な要素なので、後からでいいので必ず目は通しておくようにしましょう。
まとめ:経済指標で費用対効果の高いNZドル取引を
ニュージーランドの経済指標について、どういうふうにチェックをしていけばいいか、ひと通り解説をしてきました。
ニュージーランド経済の状況、金融政策との関係など、大まかなイメージが掴めてきたのではないでしょうか。
では、最後にまとめということで、今回の内容のおさらいをしておきましょう。まずは、ニュージーランドの特徴など、経済指標を読むための前提となる部分です。
ニュージーランドの特徴
- ニュージーランドは酪農業が盛んな国リーマンショック以降の利下げサイクルが継続している経済は良好なものの物価がやや低く、さらなる利下げもある得る中国やオーストラリアの経済動向の影響を受けやすい
金融政策はファンダメンタルズ的にも非常に重要な要素ですが、経済指標がそれにどうつながっていくかを考えるというのが1つのポイントです。では、今回解説した経済指標の中でとくに大事なもの2つを、ここでは再掲しておきましょう。
とくに大事なニュージーランド経済指標
- RBNZ政策金利発表雇用統計(失業率、就業者数増減)
いろいろな経済指標を紹介しきましたが、「多すぎる……」と感じる人もいたかもしれません。そんな人はまずは上の2つを欠かさずチェックするようにしてください。
非常に重要な経済指標なのでNZドルへの影響は大きく、費用対効果はかなり高いと思います。ここからはじめて、徐々にニュージーランドの経済指標に慣れていっていただければと思います。
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- 監修者紹介/FX専門家 五十嵐勝久
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中央大学経済学部卒。アルゴ株式会社代表取締役。銀行や証券、FX会社に勤務し、営業、企画、マーケティング部に所属。40歳で会社を辞めて起業。現在はFXや証券会社などのプロモーション業務、システム開発を行う一方、システムトレーダーとしても活躍。
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