FXに特定口座はあるの?FXにおける特定口座の有無と確定申告を解説
- 更新日: 2020/05/27
株を取引する時は、証券会社に証券口座を開設しなければなりませんが、その際、一般口座と特定口座というものがあります。
特定口座にすると納税の手続きがとても楽になるのですが、これはFXにもあるのでしょうか?
そこで今回は、
- FXに特定口座はあるの?
- FX取引で出た利益や損失はどうすればいいの?
という人に、FXにおける特定口座の有無や、FXで出た利益や損失をどう処理すれば良いのか、ということを解説します。
後ほど詳しく説明しますが、FXを取引して出た利益は基本的に申告する必要があります。とはいえ、1円でも利益が出たら申告しなければいけないのかというと、そうではありません。
申告しなければならないケースと、そうではないケースがあります。
また、FXの初心者の人の中には、株の経験がある人もいるのではないかと思います。株の取引経験がある人がFXに興味を持ち、チャレンジするケースは少なくありません。
そのため、株の特定口座のような便利な制度を知っていて、「FXにも似たような仕組みがあるのではないだろうか」と考える人もいるのではないでしょうか。
今回は、FXにおける特定口座の有無や、FXの損益をどのように処理すれば良いかといったことを詳しく解説します。
FXの利益や損失を正しく処理し、後から困ることのないようにしましょう。
特定口座とは何か
株やFXを始める際、大抵の人は、それに関連する様々な情報を収集した上で始めようとするのではないでしょうか。そんな中で、「特定口座」という言葉を見たり聞いたりしたことのある人もいるのではないかと思います。
ここでは、特定口座がどのようなものなのかということと、FXにも特定口座が関係するのか、ということについて解説していきます。
特定口座はどんな口座?
今、この文章をご覧になっている人の中に、株の取引をしたことがある人はいるでしょうか?株の取引経験のある人であれば、必ずと言って良いほど「特定口座」という言葉を目にしたことがあるのではないかと思います。
なぜなら、口座開設時に特定口座を開設するかどうか訊かれることが多く、人によっては、口座開設後に特定口座の開設手続きを行うケースも珍しくないからです。
株や投資信託を取引して、反対売買を行って損益が発生した場合は、確定申告を行う必要があります。確定申告を自分で行える人であれば、特定口座があっても無くても、あまり関係ないかもしれません。
しかし、株に不慣れな人の場合は、面倒な株の原価計算を都度行うのは、非常に手間がかかり、面倒です。その手間を省くため、各証券会社は特定口座という口座を用意していて、納税に係る投資家の手間を省いているのです。
特定口座には2つの種類があります。1つは「源泉徴収あり」、もう一つは「源泉徴収なし」の口座です。
源泉徴収ありの方は、株の売却益が出た場合に、そこから所得税15.315%と住民税5%差し引いた金額が証券口座に入金されることになります。つまり、あらかじめ所得税と住民税を控除した金額を入金してくれるのです。
そのため、源泉徴収ありの場合、株で出た利益に係る税金は、すでに納税されていることになり、確定申告も住民税申告も、してもしなくても良い、ということになります。もし申告する場合、それに必要となる書類は証券会社の方で用意してくれます。
もう一つの源泉徴収なしの口座を選択した場合は、自分で確定申告する必要がありますが、それに必要となる書類は証券会社の方で用意してくれます。ただし、利益の合計が20万円以下の場合は確定申告を行う必要はありません。
2種類の特定口座以外に、一般口座という口座もあります。こちらは、自分で書類を作成して確定申告をしなければいけません。一般口座の場合も、利益の合計が20万円以下である場合は確定申告を行う必要がありません。
このように、源泉徴収ありとなっている特定口座の場合は、自動的に源泉徴収をしてくれるので、確定申告の手間が省けるというメリットがあります。
源泉徴収なしを選んだ場合は、利益の合計が20万円以下であれば確定申告の必要はありません。また、源泉徴収ありの時とは異なり、源泉徴収されてないため、利益が20万円以下の場合はお得になります。
特定口座は、確定申告をする場合であってもしない場合であっても、手間を省くことができるので、投資家にとっては非常に便利な口座です。なお、特定口座は、上場株式や投資信託、外国株式、公社債投資信託等でも利用することができます。
また、源泉徴収ありの特定口座を使っているケースのうち、複数の証券会社で取引していて、利益が出た証券会社と損失が出た証券会社がそれぞれある…という場合もあります。
その場合、利益が出た証券会社の口座ではすでに税金が引かれてしまっていますが、確定申告をすることで利益と損失を相殺することができるので、節税できます。
さらに、この時に損失の方が大きく、利益から控除しきれない場合は、譲渡損失の繰越控除も可能です。その場合、その時の損失については3年間繰り越すことができます。
この繰越控除は、
- 1年目…400万円の損失
- 2年目…200万円の利益が発生。1年目の損失と相殺し、200万円の損失。
- 3年目…100万円の利益が発生。2年目の損失と相殺し、100万円の損失。
- 4年目…3年目の損失を計上することができる。もしここで利益が出た場合は利益と相殺。反対に損失が出た場合は、この年は3年目の損失を計上。4年目の損失は翌年に繰越。
というような形で計上することができます。
FXに特定口座はない
株を取引したことのある人がFXを始める場合、株の特定口座がFXにもないか考えるケースが珍しくありません。
また、株やFX等様々な投資商品を扱っている証券会社で口座を持っている場合、株で出た利益や損失をFXと通算できないか、そのために、FXも特定口座の対象にならないか…といったことを考えるケースもよくあります。
しかし、実のところFXには株の特定口座のような仕組みはありません。そのため、一定以上の利益が出た場合は自分で確定申告をしなくてはならないのです。
FXと税金、確定申告
FXで利益が出た場合も、株と同様に確定申告する必要があります。
FX取引で利益が出た場合、その利益は雑所得という扱いになり、所得税15%+復興特別所得税2.1%+住民税5%の合計20.315%の税金が課税されます。
なお、課税されるのは含み益ではなく、決済によって生じた損益とスワップ(スワップに関しては、ポジション決済の有無にかかわらず、毎日口座に反映され、出し入れできる業者の場合は、ポジションを決済していなくても、スワップは課税対象となる。)が対象となります。
しかし、利益が出たら必ず申告しなければならないのかというと、必ずしもそうとは限りません。
どういう時に確定申告の必要があるかというと、下記の通りになります。
- 給与所得が2000万円を超えている人。あるいは、2か所以上から給与をもらっている人。
- 給与所得が2000万円未満で、雑所得が年間20万円を超えている人。
- 給与所得が無い人のうち、雑所得の合計が年間38万円を超える人。
- 公的年金等の収入金額が400万円以下の年金生活者のうち、雑所得の合計が年間20万円を超える人。
つまり、サラリーマンやOLといった職業の方の中で、給与所得が年収2000万円未満である場合は、FXで得た利益が年間20万円未満であれば確定申告する必要がない、ということになります。
また、専業トレーダーの人やフリーターの人で、FXの利益が年間38万円を超えているようであれば、確定申告する必要がある、ということになります。なお、このケースは専業主婦や学生であっても該当します。
ちなみに、FXの利益そのものは年間20万円未満であっても、何か他の所得との合計が年間20万円を超えているようであれば、確定申告しなければならない、ということに注意してください。
上記の確定申告が必要なケースに当てはまらない場合でも、1年の間に損失が発生している場合は、話が異なります。この場合、必ずしも確定申告をする必要は無いのですが、確定申告をしておくことで、株と同様に3年間の繰越控除を受けることができます。
さらに、雑所得に該当する他の金融商品(主に証拠金取引による差金決済を行う金融商品)との損益通算が可能となりますので、FX以外にも投資している人の中で、FXと同じ雑所得に該当する金融商品…例えば、取引所FX取引であるくりっく365をはじめ、日経225先物、TOPIX先物、商品先物、CFD、バイナリーオプション等を取引している場合、1年間で損失しか発生していなくても、確定申告をしておいたほうが良いでしょう。
ただし、雑所得に該当する金融商品同士の間で損益通算が可能、ということになるので、株との損益通算はできません。
なぜなら、株の売買で発生した利益は譲渡所得、雑所得、事業所得のいずれかに該当するのですが、FXやCFDなどで発生した利益は雑所得の中でも「先物取引に係る雑所得等」という扱いになるため、株とは損益通算できないのです。
なお、FXの取引をしている人の中には、海外のFX業者で取引している人もいるのではないでしょうか。海外のFX業者で取引をして発生した損益は、国内の業者で取引した場合と同じく雑所得に該当します。
しかし、大きく違うのは、国内のFXのような一律20.315%の税率がかかる申告分離課税ではなく、金額に応じて15%~55%の税率がかかる総合課税となることです。
ちなみに、今話題の仮想通貨の場合も同じく雑所得に該当しますが、海外のFX業者での損益と同様に総合課税として扱われます。そのため、FXやCFD、商品先物取引で生じた損益との損益通算はできません。
損益通算に関しては、先ほど特定口座の項目で紹介したとおりであり、FXの場合も株式と同じような形で損益通算することができます。
例えば、FXとCFD、商品先物を取引している人がいるとします。FXでは年間100万円の利益が出たのですが、CFDと商品先物ではそれぞれ年間で10万円の損失が出てしまった場合、実際の利益は80万円ということになり、この80万円に20.315%の税率がかけられます。
当然ながら、100万円に課税される場合に比べ、80万円に課税される場合の方が、税金は少なくなるため、損益通算することでこの例のように節税できるケースもあります。
また、繰越控除については特定口座のところで説明したのと同様に、損失が発生した場合は3年間繰り越すことができます。
なお、すでに説明したとおり、FXで得た利益には税金がかかりますが、節税するために経費を立てることは可能です。ただし、当然ながら何でもかんでも経費にできるわけではありません。
経費にできるものとして考えられるのは、FX取引で使用しているインターネット通信費、FX関連の有料メールマガジンやセミナー参加費、FXに関する書籍等があります。
なお、内容に関しては、必ずしも直接FXに関係しているものである必要はなく、間接的に関連するものでも認めてもらえます。
例えば世界経済に関するもの、トレード手法やマーケット分析など、広義の意味でFXにも関連する内容のものが、それに該当します。
とはいえ、素人判断で経費計上した結果、後から税務署に指摘されるようなことになってしまうとかえって手間がかかることになるため、経費にできるものとできないものの詳細は、きちんと税理士に相談して確認した方が良いでしょう。
FXにおける税金や確定申告についてより詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
FXの確定申告を忘れずに
すでに説明したように、FXで一定の利益が出た場合は、確定申告が必要となります。FXの場合は株の特定口座(源泉徴収あり)に該当するものがないため、決済して利益が確定した段階で税金が引かれることはありません。
そのため、一定の条件を満たした場合は、必ず確定申告する必要があります。
もしも確定申告をせずにいた場合は、追徴課税されてしまいます。そうなると未払い分の税金を支払うだけでなく、無申告加算税や重加算税も支払う必要が出てきます。
怖いのは、数千万、数億といった大きな利益を得たにも関わらず、確定申告を行っていなかった場合です。
追徴課税された時点で大きな利益が出ているようであれば、問題なく払うことができますが、そうでない場合は、税金が支払えない状態になってしまうかもしれません。
よほど悪質でない限りは分割して支払うことも認めてもらえますが、先ほども書いたように、無申告加算税や重加算税も支払う必要があるため、多額の税金を支払い続けなくてはならない事態に陥ってしまいます。
確定申告を怠ってしまうと、後々予想もしないような大きな金額の税金の請求が来てしまうこともあるので、FXで利益が出たなら、忘れず確定申告をしましょう。
なお、自分が年間でどれだけの利益を得たのか、あるいは損失を被ったのかは、各FX会社で用意している年間損益計算書で確認することができます。
年間損益計算書は、各FX会社の管理画面などから簡単にダウンロードできるケースが多いので、ダウンロードしてプリントアウトしておきましょう。
また、確定申告の際には、国税庁のHPに掲載されている確定申告書の他に、先ほど説明した年間損益計算書、先物取引の計算明細書も必要となります。
このうち、年間損益計算書については、取引で損益を出したFX会社のものを持っていき、残りの2つについては、国税庁のHPからダウンロードして記入すると良いでしょう。
まとめ
株式の取引をする際に選ぶことができる特定口座は、確定申告の手間を大幅に減らすことができる非常に便利な口座です。FXには残念ながら特定口座はありませんが、それは、確定申告をしなくてもいいということではありません。
一定の条件を満たしている場合にはきちんと確定申告をしなくてはならず、もしも条件を満たしている場合に確定申告をしなかった場合、追徴課税によって本来の税金に加え、無申告加算税や重加算税などが請求されてしまうかもしれません。
また、損失が出た場合、損失を確定申告することで、税金が安くなることもあります。損失分は3年間繰り越すことができるので、申告することで、翌年得た利益から控除することもできます。
レバレッジの関係から海外のFX業者を通じてFXの取引をしている人も少なくありません。しかし海外のFX業者を通じて得た利益に関しては、国内のFX業者を通じて得た利益とは別に計算され、課税の区分も異なります。
利益が大きい場合は、税理士などに相談した方が良いでしょう。
FXでどれだけ利益を上げることができたか正確に把握するためには、FX会社の年間損益計算書は毎年きちんとダウンロードして、できるだけプリントアウトして保管しておきましょう。
確定申告には確定申告書と年間損益計算書、先物取引の計算明細書が必要となりますが、これらの書類に関しては国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
年間損益計算書は、複数のFX会社に口座を開設して取引している場合はそれらすべての口座の分が必要になりますので、忘れないようにしましょう。
確定申告を怠ってしまうと、せっかく得た利益の大部分が、税金として取られてしまうことになりかねません。そうならないよう、特定口座がなくても確定申告はきちんと行いましょう。
当サイトが選ぶ部門別No.1のFX口座はこちら!
FXを始めてみたい方は、こちらで人気の会社を見てみましょう!