FXの利益はふるさと納税で節税できる!仕組みと控除額の計算方法
- 更新日: 2019/07/16
ふるさと納税の制度が定着しつつあります。給与所得等があり納税を行っている多くの方は、ふるさと納税の制度が利用可能です。
ふるさと納税は応援したい自治体の事業に対し寄附を行うという、寄附の制度となります。そしてふるさと納税制度を利用して寄附を受け付けている自治体の多くは、返礼品を用意しており、寄附を利用して返礼品を受け取ることが可能です。
FXトレードの利益に対しても約20%の課税がなされていますが、その納税額の中から、一部を寄附金に充てることもできます。
今回はFXトレードの利益とふるさと納税の関係について、計算式も利用しながら解説しました。
この記事の目次
ふるさと納税とは
一部では過熱感も指摘され、自治体の過度な返礼品競争に総務省が指導に乗り出す事態も招いているふるさと納税。まず最初にふるさと納税について、基本的な内容を確認いたします。
ふるさと納税は、自分が応援したい自治体へ寄附を行うことで、寄附の金額に応じた税の控除を受けられる制度です。“納税”との名称が付されていますが、制度上は寄附の仕組みに該当します。
ふるさと納税の制度を利用するためには、以前は非常に煩雑な手続きを必要としましたが、現在は制度の整備がなされ、簡単に利用が可能です。寄附金については自治体によっては使い道の指定も可能で、自治体により寄附金の用途は様々です。
ふるさと納税の利用者は、応援したい自治体とふるさと納税が対象となる事業を見た上で、寄附する先を決めることができます。
そしてふるさと納税の最大の特徴は、返礼品の存在です。ふるさと納税では寄付のお礼として、返礼品を用意の自治体が多く存在します(返礼品の無い自治体も存在)。
返礼品の内容は様々であり、自治体の特産物から自治体で受けられるサービス利用券、更には家電製品まで自治体により非常に種類が豊富です。
特に農産物や海産物が人気化しており、品切れが生じる自治体もあります。尚、以前は金券の返礼品も存在しましたが、総務省の指導の結果、現在金券の返礼品は存在しません。
ただし各自治体がふるさと納税の寄附を集めるために返礼品競争を招いている、との批判を受ける事態も生じています。
総務省はふるさと納税の返礼品については、地元の特産品などに限るよう現在指導を行っており、今後は家電製品などの返礼品が減少する可能性があります(地元に家電製品の工場がある場合もあるため対応は自治体により別れる見込み)。
ふるさと納税は返礼品がクローズアップされる傾向がありますが、応援したい自治体や事業を寄附金の制度を利用して応援する、社会貢献の制度となっています。
自らのふるさと以外の自治体にも寄附が可能
“ふるさと”という名称が付いているため、ふるさと納税の対象は自らの出身地等のふるさとに限定されている、という誤解を有している方も多く存在しています。
しかしながら“ふるさと”との名称が付されていますが、寄附の対象先は自らの故郷等に限定される訳ではありません。応援したい自治体やその事業を支援する、というものがふるさと納税のコンセプトです。
寄附の対象先は故郷等の自らの関係先自治体ではなく、応援したい自治体が対象となり、それまで住んだことはおろか、行ったこともない自治体もふるさと納税の対象です。
よって旅行気分や移住気分を味わうこともできるのが、ふるさと納税の魅力の1つとも言えます。
またふるさと納税は、利用可能金額によっては複数の自治体に対して行うことも可能です。よって北は北海道から南は沖縄まで、様々な自治体に寄附を行い、地元の特産品を返礼品として受け取ることもできます。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税の法律上の位置付けは寄附金となります。寄附金は税金の控除対象となるため、寄附した金額から自己負担額2,000円を除いた金額を、所得税や住民税などから控除できます。
よって仮に10,000円をふるさと納税で寄附した場合でも、自己負担額は2,000円です。残りの8,000円については税金からの控除となります。ただしあくまでも控除であるため、対応する納税額が存在することが前提となります。
よって所得税・住民税の支払がなされていない場合は控除の前提となる納税がなされていないため、ふるさと納税制度の利用ができません。
ふるさと納税制度を、実質負担2,000円でできる寄付金額の上限目安は概ね下記となります。(概算のため、詳細金額は居住の自治体に問い合わせの必要があります)
年間給与収入 | 独身・共働き | 夫婦 (配偶者控除あり) |
夫婦と子供 (16歳以上19歳未満) |
年金暮らし夫婦 |
---|---|---|---|---|
300万円 | 28,000円 | 19,000円 | 11,000円 | 19,000円 |
400万円 | 43,000円 | 33,000円 | 25,000円 | 36,000円 |
500万円 | 61,000円 | 49,000円 | 40,000円 | 59,000円 |
600万円 | 77,000円 | 68,000円 | 60,000円 | 78,000円 |
700万円 | 109,000円 | 85,000円 | 77,000円 | 110,000円 |
800万円 | 131,000円 | 120,000円 | 111,000円 | 134,000円 |
900万円 | 153,000円 | 141,000円 | 132,000円 | 158,000円 |
1,000万円 | 177,000円 | 165,000円 | 156,000円 | 185,000円 |
世帯構成によりふるさと納税が可能な金額は異なりますが、年間給与収入500万円で4~6万円というのが、一つの目安です。尚、給与収入が多ければそれだけ納税額が多くなるため、ふるさと納税が利用できる金額は大きくなります。
FXでの利益もふるさと納税の対象となる
上記では先に、通常の給与所得の場合のふるさと納税が可能な金額を取り上げました。給与所得であろうと、FXトレードでの利益であろうと納税が必要となります。そして納税がなされれば、寄附金として利用可能な控除枠が生じます。
FXトレードでは利益の約20%を納税する必要がありますが、FXトレードで上げた利益もふるさと納税の対象となります。
寄附金の控除限度額は下記の計算式で求めることができます。
- 控除限度額=((個人住民税所得割額×20%)÷(90%-所得税率×1.021))+2,000円
- 個人住民税所得割額=(前年の総所得金額等-所得控除額)×税率(住民税)-税額控除額
寄附金の控除限度額は、給与所得の場合とFXや株式や先物の取引での利益の場合、いずれも基本的には上記2つの計算式を利用する事で算出ができます。
(給与所得の場合、配偶者控除他の様々な控除が存在するため、上記の計算式の後に家庭状況に応じ最終的な控除額が確定)
FXトレードの利益の寄付金控除額の計算方法
FXトレードで利益を計上した場合の寄附金控除額は下記の流れで計算ができます。
FXや先物取引で得た利益についての税金は約20%とされていますが、正確には所得税15%・住民税5%・復興特別所得税(基準所得金額の2.1%、平成25年から平成49年まで)です。
よってFXの利益は3種類の税金から構成されています。寄附金の控除額を算出に必要な住民税は、FXトレードの利益の場合は税率が5%に固定されていることから、所得の金額によって税率が変化する給与所得などと比べると、明確に控除額の計算が可能です。
1.個人住民税所得割額を算出
FXトレードの利益における住民税は下記の計算式で算出できます。
個人住民税所得割額=FXトレードの利益×5%(住民税)
※FXトレードの利益は取引手数料等の経費を控除後の金額
上記の計算式の通り、FXトレードの利益の5%が住民税に該当します。尚、FXトレードで利益を計上し確定申告を行うと、最初に納税を行うのは所得税及び復興特別所得税の2者となります。
住民税は確定申告の後に、別途居住の自治体から通知があり、コンビニエンスストア等で支払うことになります。確定申告時に算出した納税額に比べ、当初支払う納税額は算出した金額に対し少なくなるのは、住民税は後に請求されるためです。
所得税は国税であり、住民税は地方税であることから、このようなタイムラグが発生します。このタイムラグを知らずに、予定の納税金額より少なく済んだと思い差分を使ってしまうと、後で住民税の請求が来て慌てることになります。
よってFXトレードの利益を納税する際は後日5%の住民税が別途請求される、という認識が必要不可欠です(初めてFXで利益が出た年の確定申告の際にご注意ください)。
2.控除限度額の算出
上記(1)で個人住民税所得割額が算出されているため、算出数字を控除限度額の計算式に投入することで、控除限度額の算出が可能です。
例えばFXトレードの利益が100万円で所得税率が20%(実際の所得額によって変動)の場合、控除限度額は下記です。
- 控除限度額=((1,000,000円×0.05×0.2)÷(0.9-0.2×1.021))+2,000円
- 控除限度額=(10,000円÷0.6958)+2,000円
- 控除限度額=14,371円+2,000円=16,371円
3.給与所得と合算で考えるのが現実的
上記でFXトレードの利益での寄付金控除額の算出が可能です。しかしFXトレードの利益のみで、寄付金控除額を考えるケースは少ないと考えられます。
よって通常は、給与所得等での寄付金控除額に加え、FXトレードの利益での控除額を合算することが多いと言えます。
その際は給与所得等から求められた個人住民税所得割額に“FXトレードの利益×5%”を合算した上で、控除限度額を算出することで給与所得等とFXトレードの利益が合算された控除限度額の算出が可能です。
寄附金控除額が足りない場合の調整弁に利用可能
FXトレードの利益控除額は利益100万円でも約1.6万円です。
FXトレードで年間100万円の利益を上げられる投資家は、数が限られると言えます。
よって専業FXトレーダーや兼業であっても給与所得以上の利益をFXで上げている方以外は、FXトレードでの利益での寄付金控除額の増加分は、給与所得等の寄付金控除額に加えることが出来る調整弁としての利用が現実的です。
希望する自治体の返礼品に寄付金控除額が足らない場合、FXトレードを行っていて利益が出ているようなら、FXトレードの利益も控除額に加味することで、不足金額分をカバーできる可能性があります。
若干手間はかかりますが、FXトレードの利益分の控除金額も事前に算出しておくことで、ふるさと納税を行う際に給与所得等のみの控除額では手が届かない自治体にも手が届く可能性が生じます。
面倒でもひと手間かけて計算することが、ふるさと納税制度をフルに活用するコツと言えます。
最終的な算出は自治体に確認が必要
税金の関係の算出は原則税務署や自治体に確認することが必要です。よってふるさと納税に関する寄付金控除額の算出についても、詳細は自治体窓口に問い合わせる必要があります。
控除額に余裕がある範囲でふるさと納税を行う際は、問い合わせを行わずとも問題は生じるケースが少ないと言えます。しかしながら枠の範囲ギリギリで行う場合は、思い過ごし等で寄付金控除枠からはみ出てしまうケースもあります。
迷った時は関連窓口に問い合わせるというスタンスは、ふるさと納税制度に関係なく、確定申告等で税額などを算出する際に必要不可欠なスタンスとなります。
まとめ
様々な問題点が指摘されながらも、ふるさと納税の制度は定着しつつあります。税収不足に悩む自治体の中には様々な知恵を絞って、ふるさと納税制度での寄附を集めようともしています。
返礼品に注目が集まるふるさと納税ですが、返礼品が無くともこの事業を応援したい、という自治体の事業には寄附金が集まっている一面もあります。
FXトレードの利益についても、寄附金控除の対象となるため、ふるさと納税を行うことが可能ですが、意外に知られていない部分でもあります。
FXトレードで利益が出たら寄付金控除額を確認して枠が増えるようなら、興味のある自治体に対してふるさと納税の検討も行ってはいかがでしょうか?
FXトレードの利益で地域貢献を行うことにも繋がりますよ。
FXを始めてみようかな…と興味を持った人は、以下の記事でFXに関する最低限必要な情報がまとめられているのでぜひ参考にしてください。