FXと外貨預金の違いを解説/メリットとデメリット・注意点
- 更新日: 2019/07/11
FXと外貨預金は、同じ為替を取引対象としますが全く異なる性格を有しています。
FXと外貨預金の違いについて解説するとともに、手数料の安いFX会社を利用する事で、疑似的に外貨預金を行う方法についてもご紹介致します。また、株のと違いについては、下記サイトにてご紹介していますので、ご参考ください。
この記事の目次
外貨預金とは
外貨預金とは、「外国の通貨で預金をすること」を指します。通常の場合は日本の通貨である円で銀行に預金を行いますが、日銀の低金利政策の下、円で預金を行っても金利は殆ど付かない状態となっています。定期預金でも金利が0.1%以下では、銀行預金では全く金利収入は期待できません。
しかしながら海外では、日本程の低金利国は殆どありません。よって外国の通貨で預金を行う外貨預金では、円預金では殆ど付くことのない金利収入を得ることができます。
近年では、円をそのまま貯金するよりも、①外貨預金の方が利息が高い!②為替レートの変動で「為替差益」も儲かる可能性がある!ことから、外貨投資に人気が出てきています。
外貨預金のメリット:金利収入を得ることができる
上述のように、日本では日銀の低金利政策のため、銀行に預金を行っても殆ど金利収入を得ることはできません。しかしながら金利が機能している海外では、通常通り銀行に預金をすることで金利収入を得ることができます。
各国の金利を決定する際に指標となる、国債の金利は下記となっています(12/5/時点)。
- 日本10年債 0.04%アメリカ10年債 2.30%ドイツ10年債 0.33%イギリス10年債 1.20%
各国の10年債からの比較でも分かるように、日本における金利水準は世界的に見ても、飛び抜けて低くなっています。外貨預金を行うことで、国内にいながら海外の銀行に預金を行うように金利収入を得ることができます。
(※2017年1月調べ) | 【高金利国】ベスト10 | 【低金利国】ベスト10 | ||
1位 | ガーナ | 25.50% | スイス | -0.75% |
---|---|---|---|---|
2位 | アルゼンチン | 24.75% | デンマーク | -0.65% |
3位 | マラウイ | 24.00% | スウェーデン | ‐0.50% |
4位 | モザンビーク | 23.25% | 日本 | ‐1.00% |
5位 | ガンビア | 23.00% | 欧州 | 0.00% |
6位 | ベネズエラ | 22.49% | チェコ | 0.05% |
7位 | ハイチ | 20.00% | イスラエル | 0.10% |
8位 | イラン | 20.00% | 英国 | 0.25% |
9位 | ベラルーシ | 17.00% | ニューカレドニア | 0.25% |
10位 | アンゴラ | 16.00% | シンガポール | 0.46% |
FXでよく耳にする「スワップポイント」と「スワップ金利」は同じ意味ではないので注意しましょう!「スワップポイント」は通貨を取引した際に2国間の金利の差額をスワップポイントとして受け取る事ができると言うもので、「スワップ金利」とは、固定金利と変動金利を変えたレートまたはその逆の事を指します。
外貨預金のデメリット:元本の保証はなされていない
預金と言うと元本保証のイメージがあります。日本では銀行預金は元本の保証がされています。更に預金先の銀行が破綻した場合でも、上限1000万円までの保証が国によりなされます。しかし同じ“預金”との名前は付いていますが、外貨預金は元本の保証はなされていません。(※1)
外国の通貨=為替は日常的に値動きが生じています。よって日本円から見た各国の通貨は、日々価格が変動するのが通常です。よって例えば同じ1ドルであっても、日々円換算した際の価格は変化します。価格変動により、円換算した際に当初の預金額より多く返金を受けられる可能性もあります。しかしながら逆に、当初の預金額より少ない返金しか受けられない可能性もあります。
外貨のまま資産を持ち続ける場合は別として、最終的に円に外貨預金を戻すのであれば、必ず価格変動が生じます。
よって外貨預金は“預金”との言葉が付いていますが、為替の値動きのため元本が保証されていない、との点は充分に認識す必要があります。
(参考※1:預金などの保護の範囲一覧)
預金などの分類 | 保護の範囲 | ||
---|---|---|---|
預金保険の対象預金等 | 決済用預金 | 当座預金・利息のつかない普通預金など | 全額保護 |
一般預金等 | 利息のつく普通預金・定期預金・定期積金・元本補てん契約のある金銭信託(ビッグなどの貸付信託を含みます)・金融債(保護預り専用商品に限ります)など |
合算して元本1,000万円までと破綻日までの利息等を保護(注) 1,000万円を超える部分は、破綻金融機関の財産の状況に応じて支払われます。(一部カットされる場合があります。) |
|
預金保険の対象外預金等 | 外貨預金、譲渡性預金、金融債(募集債及び保護預り契約が終了したもの)など |
保護対象外 破綻金融機関の財産の状況に応じて支払われます。(一部カットされる場合があります。) |
外貨預金は為替手数料=スプレッドも考慮する必要がある
外貨預金は預金を行う際、そして外貨から円に戻す際に、レートの差が存在します。
例えば米ドルが1ドル=112.50-113.00円の場合、112.50円と113.00円の間に50銭の差分が生じていますが、この差分は銀行が徴収する手数料部分に該当します。
【預入時】100万円÷113.00=8849.5575ドル
【払戻時】8849.5575×112.50=995575.21875円
(往復で4424.78125円の手数料)
100万円が、99万5575円に!
よって外貨預金を行う際は本部分(スプレッドと言われる)の存在も意識せざるをえません。仮に外貨預金を行い、値動きの無い中、翌日に外貨預金を解約するとスプレッド分は損失を計上することになります。
外貨預金を行う際は、金利及び値動きに対する注意も必要となりますが、手数料とも言うべきスプレッドの存在にも注意を払う必要があります。ドルやユーロのような主要国通貨の場合、スプレッドも比較的狭いのですが、イギリスポンドやオーストラリアドルと言った通貨ではスプレッドが広くなる傾向にあります。よって、金利収入があっても最終的に手数料負けしてしまうケースもあります。
外貨預金を行う際には、為替手数料の確認も必要不可欠となります。
外貨建てMMFという選択肢も存在
証券会社では外貨預金に類似の金融商品として、外貨建てMMFの取扱いがあります。海外の公社債等の安全性の高い債券で運用を行う外貨建てMMFは、外貨預金同様に金利収入を得ることができ、手数料も安くなるケースが多くなっています。
MMF(マネー・マネジメント・ファンド)とは、投資信託の一つ。 主要な投資対象を、国債や公社債や格付けの高い社債を投資先としているため、投資信託の中では比較的安全性が高い商品であると言われています。
新たに証券会社に口座開設の必要があるため、銀行口座の中で資金を動かすだけで取引可能な外貨預金とは異なり、証券会社の口座入金を行う必要がある等の手間が若干かかります。しかし外貨で資産運用を考える場合は、外貨建てMMFが金利・手数料の面でメリットを享受できる可能性があります。
ただし外貨建てMMFも元本の保証はなされておらず、価格変動の結果、投資金額が毀損する可能性がある、とのリスクが外貨預金同様に存在しているとの認識が必要です。(当然、預金ではないので預金保険の1000万円の保証の対象外です)
外貨預金と比べるFX
上記で解説のように外貨預金は基本的には価格変動=為替変動はあるものの、金利収入を目的とする金融商品となります。
次に外貨預金とFXについての代表的な相違点を3点取り上げます。
相違点(1) FXは価格変動を狙う
FXの本質は、為替の小さな値動きにレバレッジをかけることで値動きから収益を得る、と言うものです。
外貨預金はレバレッジはかかりませんが、FXでは最大25倍のレバレッジをかけることができます。簡単に言えば100万円の資金で2500万円分の取引が可能となります。
外貨預金の場合100万円の資金で金利収入を狙うのに対し、FXは100万円の資金(証拠金)を元手に最大2500万円分の資金を利用して、値動きから収益を得ようとするものです。
仮に100万円の資金でドル/円で1円の値動きが生じた場合、外貨預金であれば1万円の価格差益となりますが、FXの場合は最大25万円の価格差益を得ることができます。
金利収入を目的とする外貨預金と値動きから収益を得るFXでは、その目的自体が異なるとの理解が必要です。
相違点(2) レバレッジの有無
前述の説明において既に取り上げていますが、FXでは個人の場合最大25倍までのレバレッジが認められています。100万円の証拠金を預けることで、最大2500万円分の取引が可能となります。
レバレッジにより、資金量から見て非常に多くの収益を上げることが可能になります。しかし逆に資金量から見て、大きな損失を計上する可能性もあります。先ほどのケースであれば、1円円高となれば25万円の損失を計上することになります。
このようにFXに付き物のレバレッジは、利益獲得のツールとなる反面、うまく使いこなさなければ資金をすり減らすためのツールにもなりえます。
そして多くの初心者トレーダーがレバレッジを過度にかけたトレードで、資金を一気に失い、為替市場で大火傷することになります。
外貨預金は株と異なり、通貨が紙くずになることはありません。またFXと異なりレバレッジがかからないので、当初資金以上に損失を計上することもありません。
本来株よりも資産としては安定している通貨にレバレッジをかける結果、FXは大きな利益を上げられる可能性がある反面、大きく資金を毀損するリスクもある、と言えます。
相違点(3) 手数料はFXが安い
FXにおいて、ドル/円のスプレッド=手数料は10銭以下の会社が殆どとなります。1銭を切るレートを提供しているFX会社も多く存在しています。ユーロ/ドルと言ったメジャー通貨もドル/円同様非常に狭いスプレッドで取引が可能です。
マイナーな通貨ペアの場合は、スプレッドが広がるケースもありますが、外貨預金で取扱いのあるような通貨では、外貨預金に比べFXは非常に低い取引コストで取引を行う事ができます。
外貨預金と比較した際のFXの注意点
外貨預金は預金との名称の通り、為替変動による価格の変動はあるものの、基本的に預金として金利収入を得るものとなります。
一方でFXはスワップ金利は存在しているものの、日々の値動きから収益を上げようとするものです。よって、その性格は全く違っています。
FXはレバレッジもかかることから、資産運用の中でも収益化するためには技が求められます。よって儲かりそうだから、との軽い気持ちで勉強することなしにFXで資金を投じると、あっと言う間に投資毀損することになります。
また初心者の場合、一気に大金を投じる傾向もあるため、一気に資金を失う可能性も否定できません。
損切りが必要不可欠なFX
外貨預金では損切、という概念は殆どありません。一度外貨預金に資金を預けた後は、徐々に積み立てる等で、長期間に渡り保有することで金利収入を得るケースが殆どとなります。
しかしながらレバレッジのかかるFXでは、長期保有の結果の含み損に耐えるには限界が存在します。そして限界を突破した際に、FX会社は強制的にポジションを閉じるロスカットが発動し、大きな損失を計上することになります。
収益を上げるためには技術が必要となるFXでは、最低限損切を覚える必要があります。レバレッジがかかっているFXでは損切りを行わないことは、破産に繋がると言っても過言ではありません。
外貨預金は一度預金を行えばそのまま放置でも何ら問題ありませんが、FXでは損切注文無しに放置はあり得ません。特段の対応をする必要なく持ち続けられる外貨預金と、何も考えずにポジションを放置することが死に繋がるFXは、同じ為替を取引対象としながら、レバレッジの存在によりその性格を全く異にする存在です。
FX業者の口座で疑似的に外貨預金を再現することも可能
外貨預金はレバレッジがかかっておらず、FXではレバレッジがかかっていると上記で解説いたしました。
しかしながらFXでは「レバレッジを利用しない(レバレッジ1倍)」トレードも可能です。FXでは投入資金(証拠金)の25倍までのレバレッジをかけることができますが、レバレッジをかけずに投入資金のみのトレードも可能です。
例えば10万円をFX口座に入金して、10万円分のみのロング(買い)ポジションを立てれば、それは外貨預金と同じことになります。
FXではスプレッド=手数料が外貨預金に比べると圧倒的に安く設定されています。よって投入資金以上のポジションを持たない、とのルールを徹底することで、FX口座を利用して安いコストで外貨預金を再現することができます。FXではスワップポイントと言われる金利もほぼ毎日付与されるため、日々口座にスワップポイントが振り込まれる楽しみもあります。
ただし多くのFX会社では、ポジションを取る際の単位が1000通貨もしくは10,000通貨単位に設定されています。ドル/円が120円とすると、1,000通貨単位で約12万円、10,000通貨単位で120万円の資金が必要となります。しかし中には1,000通貨単位以下でも注文を受け付けているFX会社も存在しています。
FXトレードを行っていると、外貨預金の手数料の高さに驚くことがありますが、FX口座を利用した外貨預金であれば、手数料安く疑似的な外貨預金を行うことができます。
レバレッジ1倍については、「FXレバレッジ1倍の取引/リスクが低い・利益が出にくいは本当か?」にて詳しくご紹介していますので、ご参考ください。
おすすめのFX会社
DMM FX
外為どっとコム
まとめ
個人投資家にとって、外貨預金は非常にポピュラーな投資商品と言えます。為替変動はあるものの、預金の一種であり、投資家にとっては非常に安心できる金融商品とされています。
一方でFXは金融商品と言うより、資産運用手法とも言うべき存在となります。よって軽い気持ちで取り組むと大怪我する可能性もあり、FXで資産を増やそうとすれば相応の訓練及び技術が必要となります。
同じ為替を投資先としながらも外貨預金とFXには非常に大きな違いが存在しています。ただしFXに取り組めば、必然的に外貨預金には詳しくなります。そしてFX口座を利用した外貨預金の再現を行う方も存在しています。
外貨預金とFX、その性質は非常に異なっていますが、為替を取り扱うとの本質に違いはありません。どちらに取り組むにせよ、その性格を充分に把握し、為替の値動きのリスクを知った上で取り組みたいものですね。