逆張りだけでなく順張りも?エンベロープをFXで使いこなそう!
- 更新日: 2019/07/16
FXにおけるチャートの分析方法を学ぶなかで、自分に合ったテクニカルを探している人は多いと思います。そういった人に試してもらいたいのが、今回紹介するエンベロープというテクニカルです。
- なかなかしっくりくるテクニカルが見つからないんです。
- 移動平均線は知ってるので、もう少し捻ったものを知りたいです!
- エンベロープ? あー、なんとなくだけど一応知ってるよ。
いろんな人がいると思いますが、移動平均線の特徴を活かしたエンベロープは使い勝手がいいテクニカルです。エンベロープを知っていた人も、今回初めて知ったという人も、この記事で使い方を学んで、実戦で試してみてはいかがでしょうか。
この記事の目次
移動平均線の応用型“エンベロープ”
テクニカルの王道とも言える移動平均線ですが、それをベースにいろいろなテクニカルが考案されています。エンベロープもその1つで移動平均線系のテクニカルです。これをふまえつつ、まずはエンベロープの基本の部分から見ていきましょう。
移動平均線との一定の乖離を示すエンベロープ
上のチャートにはエンベロープを入れています。エンベロープは見ての通り、3種類のラインで構成されています。真ん中のものは移動平均線で、その上にあるのがアップバンド、下にあるのがローバンドです。
ちなみに、移動平均線とアップバンドの値幅と、移動平均線とローバンドの値幅は同じになっています。また、アップバンドとローバンドは、異なる値幅のものを複数本表示させて使う場合もあります。
移動平均線は相場の動きをならして見ることができますが、それを上下にズラしたバンドを置くことで、相場を比較的ゆったりとした気持ちで見られるようになります。感覚的な話ですが、多少の動きがあってもバンド内に収まっていれば想定内、というイメージです。
そういう意味では、ちょっとした上下にビクついてしまう人なんかは、エンベロープを使うことで、ちょっとした動きに動じにくくなるというメリットがあるかもしれませんね。
※移動平均線について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
計算式はとてもシンプル
このエンベロープの計算式は、次のようになっています。
アップバンド = N本移動平均線 × (1+M%)
ローバンド = N本移動平均線 × (1-M%)
とてもシンプルでわかりやすい計算式ですね。この計算式の通りですが、移動平均線の上下に一定の割合だけズラしたラインを表示しているのが、エンベロープということになります。
なお、調整可能なパラメータは、計算式にあるNとMの2つです。Nのほうは移動平均線の平均する期間で、Mのほうは上下に何%分だけズラすのかという乖離率です。(パラメータの調整の仕方については後述します)
「やがては移動平均線に戻ってくる」という考え方
移動平均線の上下一定のところにバンドを描くエンベロープですが、その裏にあるのは「相場が大きく動いても、時間が経てばやがて移動平均線に戻ってくる」という考え方です。
チャートに移動平均線を入れて見るとわかると思いますが、移動平均線を上に抜いたり、今度は下に抜いたりというのを繰り返します。移動平均線を大きく抜けても、必ずまた移動平均線と接することになるわけで、移動平均線に戻ってこない相場は存在しません。
これを少し言い方を変えると、移動平均線から離れると移動平均線に戻そうとする力が働くということです。それも離れれば離れるほど、移動平均線のほうに引き寄せようとする力は大きくなります。
エンベロープというのは、移動平均線からどれだけ離れたかを教えてくれる目印です。この目印を使うことで、移動平均線に引き寄せようとする力を測ることができるというわけです。移動平均線で大きな相場の流れを見つつ、同時に引き寄せようという力も見られるのが、エンベロープの特徴と言えるでしょう。
パラメータ(期間、乖離率)でチューニングしろ!
エンベロープの計算式で触れましたが、パラメータは移動平均線の“期間”と、移動平均線との“乖離率”の2つです。これらを調整することによって、エンベロープの動き方は大きく変えることができます。
まず“期間”についてですが、大きくすればするほど、移動平均線の動きがなだらかになります。より大きな流れが見えるようになるわけですが、それと同時に乖離率が大きくなりやすくなります。
この乖離率は大きくなり続けるということはありえないので、はっきりと数字が決まっているわけではないですが、これ以上は開かないだろうという限界のようなものがあります。“期間”を大きくすることによって、この限界が広くなるというわけです。
一方で“乖離率”を変えると、移動平均線との値幅が変わります。小さく設定すると移動平均線に接近して、ローソク足と簡単に届くようになります。大きく設定すると移動平均線から離れて、なかなかローソク足が届かなくなります。
先ほどの“期間”の設定との兼ね合いで、ローソク足がいい感じに届くところに“乖離率”をうまく設定するのが、エンベロープを使ううえでのポイントです。ただし、どの相場でも通用するような設定の答えがあるわけではないので、状況(通貨ペア、時間足、時間帯、相場環境、手法など)に応じて変えていくことをおすすめします。
エンベロープに似ているテクニカル
エンベロープの基本的なところを見てきましたが、少し似たところのあるテクニカルとエンベロープを比較してみます。
バンドの広がり方が変わる“ボリンジャーバンド”
まずは、エンベロープと形状の似ているテクニカルです。
上のチャートに入れているのはボリンジャーバンドですが、どうでしょうか? 真ん中に移動平均線で、上下にバンドがあるという構成で、エンベロープと似ているように見えます。両者でもっとも大きく異なっているのは、上下のバンドの動き方です。
エンベロープは相場がどう動こうが、移動平均線と同じような動き方をします。一方、ボリンジャーバンドのほうは、相場が大きく動くとバンドが広がり(エクスパンション)、相場の動きが小さいとバンドは狭まります(スクイーズ)。
ボリンジャーバンドはバンドの広がり方にも注目する必要がありますが、エンベロープはパラメータを決めてしまえば、一定距離にあるバンドに当たるかどうかを見るのがメインです。このあたりは好みの世界ですが、エンベロープのほうがシンプルに相場を見られるかもしれませんね。
※ボリンジャーバンドについて詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
裏表の関係にある“移動平均乖離率”
もう1つ、形状は似ていませんが、考え方が似ているテクニカルがあります。それは移動平均乖離率というオシレーター系テクニカルです。
下のサブチャートに表示しているのが移動平均乖離率ですが、これは名前の通りで、移動平均線からの乖離率を教えてくれるテクニカルです。
ちなみにエンベロープは、この移動平均乖離率の上下の一定のパーセンテージにあたるラインを、メインチャートに表示したものということになります。つまり、エンベロープと移動平均乖離率というのは、裏表の関係にあるということになります。
トレンド系テクニカルに分類されることが多いエンベロープですが、移動平均乖離率と似ているということを考えると、オシレーター系テクニカル的な特徴が多いと言っていいかもしれませんね。
エンベロープの基本は逆張り!
それでは、いよいよエンベロープの実戦トレードにおける使い方に入っていきます。前章で説明したエンベロープの考え方をふまえたうえで、トレードのイメージをつかんでいきましょう。
バンドで見極める相場の行き過ぎ
「やがて移動平均線に戻ってくる」という考え方に基づくと、移動平均線から離れ過ぎた時に逆張りをするというのが自然ですね。ということで、エンベロープとローソク足のクロスを基準に逆張りをするというのが、基本姿勢になってきます。
上のチャートでは、アップバンドに当たったら売り、ローバンドに当たったら買いというかたちです。なお、これだと完全に逆張りになってしまうので、いったんバンドを抜けてから戻ってきたところでエントリー、というかたちでもOKです。
このトレードでは、アップバンドとローバンドできれいにトレンド転換しています。途中何度かローバンドへのタッチが続きますが、しっかり反発もあるので移動平均線でも利食えますし、仮に引っ張って下値更新で損切りしても微損です。トータルでは、大きく利益が出せているかたちになっています。
なお、この方法を使う場合は、パラメータの設定が肝になってきます。直近の動きでシミュレーションしながら、有効に機能するパラメータを探す癖をつけることをおすすめします。
レンジに強くトレンドに弱い
逆張りの方法は、レンジ相場や急に勢いが出たりしないような相場でうまくいきやすいです。ただし、逆に言うと、本格的な上昇相場、下降相場が突然起こるともろいところがあります。
上のチャートでは、同様に逆張りの戦略を取りましたが、大きく負けてしまったかたちです。エンベロープで逆張りをする場合は、こういうケースをあらかじめ頭に入れてから使うようにしましょう。
逆張りをする場合に何をすべきかというと、必ずあらかじめ損切りのシナリオも立てておくということです。つまり、「ここまで逆行されてしまったら切る」ということですね。なお、ナンピンは致命傷につながる可能性もあるので、基本的にはおすすめしません。
この点、エンベロープだけで損切りのシナリオを立てるというのは、なかなか難しいところがあります。シンプルに直近高値・安値を使うというかたちでもかまいません。エンベロープ以外の分析を使いつつ、損切りシナリオをあらかじめ立てておくようにしましょう。
レンジ相場を確認しておくのがコツ
エンベロープで継続的に勝っていくためには、エンベロープのサインに単純にしたがっていけばいいというわけではありません。エンベロープで勝てる相場かどうかを、見極めていく必要があります。
つまり、エンベロープが得意とする相場は急な勢いの出ていないレンジ相場なので、それをあらかじめ確認しておく必要があるというわけです。(もちろんそれを確認していても急に強いトレンドが発生することもあるので、早い損切りも欠かせませんが……)
エンベロープは移動平均線なので、ある程度の相場の流れはわかります。それも有効な手段ではありますが、できればそれに加えて、一回り上位の時間足を見ることによって、より大きな相場の流れを見ることをおすすめします。
大きな相場の流れを見たうえで、現在の相場における優位性の高いパラメータを見つけていくというのが、エンベロープの逆張りをするうえでのポイントです。相場をその時々の状況によって分類して、よりベターな“期間”と“乖離率”を探していってください。
エンベロープをトリガーにして順張り!
エンベロープの逆張りの方法について見てきましたが、実は順張りとしてもエンベロープは活用することができます。180度逆のやり方になりますが、エンベロープを使いこなすうえで、こちらの方法も頭に入れておくことをおすすめします。
バンドのブレイクアウトが狙い目
エンベロープの順張りにおいては、本格的なトレンド相場が起こるのを狙うことになります。そして、通常の相場であればバンド内で収まるという前提のもと、バンドを抜けるほどの動きは本格的なトレンド相場の始まりだとみなすというかたちです。
上のチャートでのトレード戦略は、アップバンドを上抜けしたところで買いエントリーをしていくというかたちです。そして、再びアップバンドに戻ってきたところでイグジットをしていきます。
このチャートは完全に上昇トレンドに向いていますね。そのうえで、真ん中あたりの大陽線が出てアップバンドをブレイクアウトしたところで買い、再びアップバンドに戻ってきたところでイグジットしています。
なお、前後にアップバンドのブレイクアウトがありますが、ここで入った場合はすぐにアップバンドに戻るので微益または微損で撤退というかたちです。うまくいかなくても、小さい痛手で逃げられるのはメリットです。
この方法を使う場合は、エンベロープを使ってのイグジットの判断ができるので、利食いも損切りもやりやすいというところがあります。一方で、トレンドが出ないところで使ってしまうと、撤退の連発になってしまう可能性もあります。
狙うタイミングを絞るのがポイント
エンベロープの順張りにおいては、いかに勝率を上げられるかというのがポイントです。狙い通りのトレードができれば、トレンドに乗って利幅を伸ばせるので、ある程度の勝率をキープすると自ずとトータルの利益は増えていきます。
この点、一般にレンジ相場が7割、トレンド相場が3割というふうに言われるように、レンジ相場のほうが多いと言われています。そのため、トレンド相場を狙うためには、このトレンド相場が出るというタイミングを見極める必要があります。
もちろんエンベロープを使って、強い勢いの動きが出たことはとらえられるわけですが、それだけでは十分とはいえません。普段よりも一回り大きな視点から、トレンドが始まりそうな局面を見極めておくことが欠かせません。
この見極めをしっかりと行って、エンベロープのバンドブレイクアウトはあくまでエントリーのトリガーとして使うのが望ましいでしょう。あとは、バンドウォークを見たうえで、エンベロープでうまくイグジットすることができます。
相場の流れがわかってこそ活きるエンベロープ
順張りのポイントを見てきましたが、逆張りの時と同様に、相場を一回り上位足の視点から見ることが大事になるということでした。結局のところ、同じ目線でエンベロープを使ってチャートを見ても、木を見て森を見ずの状態になってしまうわけです。
エンベロープを使いこなしていくためには、大きな相場の流れを見て、相場の局面を見極めることが欠かせません。つまり、今がレンジ相場に入っているのか、あるいは、今はレンジ相場からトレンド相場に移行しそうなタイミングなのか、ということです。
相場というのは、レンジ相場とトレンド相場が繰り返されていきます。今がどちらなのかという環境認識をしておくことで、今が逆張りで大丈夫なのか、順張りを狙ってもいいのかというのが見えてくるようになります。
この見極めをしてこそ、エンベロープを本当に活かすことができるようになるわけです。エンベロープは最高の武器にするために、ぜひこのことはしっかりと頭の中に入れておいてくださいね!
まとめ
今回は、移動平均線の応用型テクニカルであるエンベロープについて解説してきました。最後に、ザッと内容をおさらいしていきます。
まずは、エンベロープのベースにある考え方ですが、以下のようなものでした。
「相場が大きく動いても、時間が経てばやがて移動平均線に戻ってくる」
これに基づいて、基本的には逆張りの手法があります。その場合は、相場状況に応じてパラメータ(期間、乖離率)を調整したうえで、以下のサインでエントリーします。なお、あらかじめ損切りシナリオを立てておくのも忘れないようにしましょう。
アップバンドにタッチ(一度抜けた後でも可)で売りローバンドにタッチ(一同抜けた後でも可)で買い
一方、トレンドが発生しそうな相場状況においては、順張りも可能です。その場合には、以下のサインでエントリーすることになります。
アップバンドをブレイクアウトで買いローバンドをブレイクアウトで売り
エンベロープを使いこなすためには、相場の環境認識が欠かせません。これをふまえて、うまくエンベロープをトレードに取り入れていってくださいね!
ほかにも以下記事ではFXに関する正しい知識をまとめているので、FX初心者の人は必ず目を通しましょう。