豪ドルクロスに影響、オーストラリアの経済指標の見方を徹底解説
- 更新日: 2019/07/02
FXで人気の高い通貨の1つである豪ドルですが、その相場の流れを読み取るうえでオーストラリアの経済指標が欠かせません。ですが、単に経済指標を見ればいいわけではなく、正しく読み取るうえではいろいろとコツが必要にもなってきます。
ぶっちゃけ経済指標は、結果の良し悪しにしか注目してないです。
経済指標は見てるけど、中身はよく理解できてないかも……。
豪ドルをもっとうまく取引できるようになりたい!
こういった人が経済指標をうまく読めるようになると、取引への大きなプラス効果が期待できます。今回は経済指標という切り口で豪ドル相場へのつながりを解説していきますが、取引にプラスになる新しい気付きを、ぜひ掴んでいっていただければと思います。
この記事の目次
豪ドルを経済指標から読み解こう!
オーストラリアは天然資源(石炭、鉄鉱石、金など)が豊富に採れる資源大国で、20年以上という長期にわたって、息の長いプラスの経済成長を継続している国です。
この背景には、2000年に入ってからのアジア、とくに中国の急成長による資源需要の高まりがあります。ちなみに豪ドルというと、FXではもともと高金利通貨の筆頭格でした。
ただ、リーマンショック以降の利下げサイクルからまだ抜け出せておらず、7%近くあった政策金利は今や1.5%まで下がってしまっています(2018年9月現在)。
つまり、オーストラリアは金融緩和によって経済成長を維持してきているわけです。では、豪ドル相場にも大きな影響を与えているこの金融政策は、今後どうなっていくんでしょうか?
その分析をするためには経済動向を知る必要がありますが、経済動向を知るのに欠かせないのが、今回のテーマである“経済指標”です。
重要な経済指標においてもし予想と異なる結果が発表されると、市場はオーストラリア経済の見方を変更しますが、それに伴って、今後実施される金融政策の予測も変わることになります。
さらにその結果として、為替市場における豪ドル相場も大きく動くことになるわけです。
重要度順! オーストラリアの主な経済指標一覧
それでは、重要度の高いものから順番に、オーストラリアの経済指標を1つずつ解説していきます。数が多いですが、いきなりすべてを丸暗記する必要はありません。
重要度[大]のものはしっかり押さえてほしいですが、それ以下のものについては、まずは大まかなイメージが浮かぶぐらいを目標にしておきましょう。
重要度[大] RBA政策金利発表
RBAというのはオーストラリア準備銀行のことで、日本でいうところの日銀、つまりは中央銀行にあたる存在です。
RBAは金融政策決定会合を開いて政策金利をはじめとした金融政策を決定しています。
この金融政策決定会合は年初の毎月第1火曜日に開催されるのが原則で、決まった金融政策やその決定を行った背景を説明する声明は、お昼の13時半に発表されます。
平日のお昼時ということで、ちょっとリアルタイムでチェックは難しい人も多いかもしれませんね。
基本的に金融政策というのは、物価を安定させて、経済が安定的に成長するように持っていく目的で行われます。
具体的には、経済が過熱して物価が高騰しそうなら利上げなどの金融引き締め、経済が落ち込んで物価が下がりそうなら利下げなどの金融緩和を行います。
なお、為替という観点からも、こういった金融政策は通貨の価値に直接的に影響を与える、ファンダメンタルズ的にもっとも重要な要素の1つです。
金利が高く引き締め的な金融政策の通貨を上昇させ、金利が低く緩和的な金融政策の通貨は下落させます。
この大前提のもと、とくに利上げや利下げといったアクションが市場から注目されている状況では、この金融政策発表が相場の節目となることが多々あります。
そのため、豪ドルクロスの取引を行う際は、必ずRBAの動向は市場の注目ポイントを踏まえたうえで注意するようにしましょう。
補足:経済指標結果は予想を踏まえて判断しよう
ここで少し付け加えておくと、相場において単純にRBAが利上げを発表したからといって、豪ドルを買えばいいというものではありません。
なぜなら、市場にはRBAがどういう発表するかという予想があり、その予想を織り込んで相場は動いているからです。
そのため、予想通りの利上げであれば相場へのインパクトは薄く、むしろ利益確定による売りの動きのほうが強いことすらあります。
逆に予想外に発表を行えば、そのインパクトは強くなります。
こういった予想を踏まえて立ち回ることが、RBA政策金利発表に限らずあらゆる経済指標を見るうえでは非常に大切になってきます。
この点はしっかり頭に入れたうえで、次以降の経済指標も押さえていってくださいね。
重要度[大] 雇用統計(新規雇用者数、失業率)
毎月中旬、オーストラリア統計局は労働市場についての状況を表す雇用統計を発表しています。
発表時間は朝の10時半なので、これもリアルタイムでチェックするのはちょっと厳しい人が多いかもしれませんね。
ですが、豪ドルを取引においてこの雇用統計は非常に重要なので、リアルタイムは無理でも後で必ずチェックしておく必要があります。
なぜなら、労働市場というのは経済の状態をよく表すということで、とりわけ市場においても注目度が高いからです。
また、RBAも雇用統計の結果を受けて、金融政策への見方が変わることもあり得ます。
例えば、「最初は利上げするつもりだったけど、雇用統計の結果が予想以上に悪かったため、景気に悪い影響を与えないように利上げは延期にする」といったイメージです。
時間帯は微妙ですが、非常に重要な指標なので見落とさないようにしましょう。
なお、ここのところのオーストラリアの失業率は、だいたい5%台を中心に推移していっています。
先ほど補足したように、基本的には市場予想のズレの観点で見るのが基本ですが、「5%台からズレてないよね?」という数字自体の観点で見ておくと、なにか新しい発見があるかもしれません。
重要度[大] 四半期GDP(国内総生産)
GDPというのは、国内で生産されたモノやサービスといった付加価値を金額で測ったもので、簡単に言ってしまえば経済の規模を表した経済指標です。
主に前期比・前年比での上昇率で見ることが多いと思いますが、これはいわゆる経済成長率ということになります。
経済の状況を総合的に表している数字なので、非常に重要なのは言うまでもありません。
なお、発表は四半期ごとに行われ、発表対象の四半期が終わってから3ヶ月目の最初の水曜日に公表されるのが基本となっています。
時間帯は朝の10時半なので、これもリアルタイムでのチェックはしにくいですね。
オーストラリアのGDPに関しては、冒頭でも少し触れていますが、ここ20年以上ずっとプラスの伸び率を続けています。
非常に優等生的な成績ですが、これを今後もちゃんとキープし続けられそうかというのは、GDPを見るうえでの1つの視点になります。
重要度[中] 四半期CPI(消費者物価指数)
CPIは消費者物価の状況を表した経済指標で、これも前期比・前年比での上昇率で目にすることが多いと思われます。
発表するのはオーストラリア統計局で、発表の頻度は四半期ごと、発表対象の四半期が終わった翌月下旬に発表されます。発表時間はやはり朝の10時半です。
現在、RBAは前年比で平均2~3%(トリム平均)のインフレ目標を掲げており、これを達成するべく金融政策を打ち出しています。
ただし、現状はCPIの上昇は緩やかなものとなっており、目標達成には時間がかかりそうな雰囲気です(2018年9月現在)。
CPIの重要度は[中]としていますが、金融政策のターゲットであるため、状況によってはRBAの金融政策を大きく変える影響力もあります。
[大]に近い[中]というふうなイメージなので、推移をウォッチしていただきたい経済指標です。
重要度[中] RBA理事会議事録
RBAは金融政策委員会の2週間後(第3火曜日)に、どういった議論が行われたかをまとめた議事録を公表しています。なお、発表時間は朝の10時半となっています。
RBA政策金利発表では結果としての金融政策がわかりますが、RBA理事会議事録では、その結果に至った過程がわかるということです。
そのため、議論の過程を見ることによって、市場からはなにか将来の金融政策に対する思惑が生まれることもあります。
例えば、「利上げをしないという決断だったけど、議事録を見ると利上げを主張してる意見もけっこう強いから、利上げって意外と近いんじゃないの?」といった具合です。
そういった市場心理を読むうえで役に立つこともあるので、議事録が公表されるタイミングには気を付けておいたほうが望ましいでしょう。
ちなみに、議事録の主な内容はFX会社のニュース配信で要点はチェックできるので、原本に当たって細かく読む必要はありません。
重要度[中] ウエストパック消費者信頼感指数
ウエストパック消費者信頼感指数は消費者の景況感を示した調査で、消費者マインドがどういう感じなのかを知ることができます。
調査を実施しているのは大手民間銀行のウエストパック銀行とメルボルン研究所で、月次で結果を公表しています。なお、発表時間は朝の9時半です。
1,000人を超える消費者を対象に調査は行われていて、その結果が数値化されています。
100を基準としており、100を上回れば消費者マインドは良く、100を下回れば悪いということになります。個人消費の先行指標のようなイメージで考えておくといいでしょう。
消費者マインドが良ければ、経済にプラス要素となり、金融政策的には利上げが近づくというイメージです。
ただし、これだけで金融政策に対して決定的な影響を与えるとは考えにくいので、重要度は[中]というかたちにしています。
重要度[中] 小売売上高
小売売上高はオーストラリア統計局が発表している経済指標で、小売・サービス業の月間売上高から景気状況が分かります。
基本的に前月比の上昇率で表示され、前月からどう変動したのかという見方になります。発表は月次ベースで、対象月の結果は翌々月上旬に出ます。なお、発表時間は朝の10時半です。
小売売上高が大きく上昇すると、個人消費の調子が良いということであり、経済にプラス要素となります。
経済にプラスということは金融政策へも波及するという流れですが、重要度としては[中]という感じです。
重要度[小] 四半期PPI(生産者物価指数)
PPIは生産者の卸売販売価格の物価の状況を表した経済指標で、前期比・前年比の上昇率で目にすることになると思います。
オーストラリア統計局が調査をしており、四半期ごとに対象となる四半期が終了した翌月下旬に発表されます。なお、発表時間は朝の10時半です。
CPIが消費者が購入する際の物価であるのに対して、PPIはそれよりも前段階の物価ということになります。
CPIとは違う角度から物価を見ているというかたちで、物価に関する参考情報としてチェックしておくといいでしょう。
重要度[小] 住宅建設許可件数
これは名前の通りですが、月間で住宅建設の許可どれだけあったかという経済指標です。数字としては、前期比・前年比の上昇率で見ることになると思います。
オーストラリア統計局の調査で、対象月の翌々月上旬に結果が発表されます。なお、発表時間は朝の10時半です。
住宅がたくさん建つということは、それだけ景気が良くなって住宅を買う人が増えるだろうという見通しがあるからです。
住宅投資という観点からオーストラリア経済の動向を見られるので、今後の動きを読むうえで参考になる経済指標と言えます。
重要度[小] 貿易収支
貿易収支は国内外の経済主体の資金のやりとりをまとめた経常収支の中の項目の1つで、モノの輸出・輸入に関する値を集計したものです。
オーストラリア統計局が調査しており、対象月の翌々月上旬に結果が発表されます。なお、発表時間は朝の10時半です。
オーストラリアにとって中国への輸出は経済を支えるうえで非常に重要ですが、貿易収支を見ることで、この輸出が好調かどうかを確認することができます。
もし中国経済に異変が起これば輸出も大きく減り、貿易収支が悪化する可能性が高いからです。
現在、中国はアメリカとの間で貿易摩擦も抱えており、経済にダメージを受けてしまうことも考えられます。
その影響をオーストラリアが受けることになるかもしれないため、貿易収支に目を通しておくことは意外に重要と考えられます。
重要度[小] NAB企業景況感指数
NAB企業景況感指数は、企業から見た景況感を調査した経済指標です。民間のナショナルオーストラリア銀行が400社以上の企業に対して調査を実施し、結果を数値化しています。
数値は整数で表されますが、数値が上昇すれば景況感が良いとされます。なお、発表は月次で行われ、対象月の翌月上旬に結果が出ます。なお、発表時間は朝の9時半です。
消費者信頼感指数の企業目線版という感じで、景況感が良さそうであれば、金融政策としては利上げに近づくという流れになります。
ただし、注目度はそれほど高いわけではないので、ここでは重要度を[小]としています。
(※)経済指標の発表時間にも触れていますが、すべてオーストラリアが標準時間の場合の日本時間で記載しています。サマータイム適用時においては1時間早くなるので、時間を確認する際には注意するようにしてください。
経済指標と金融政策の関係を意識しよう!
現在のオーストラリアでポイントとなっているのは、政策金利が1.5%という緩和的な金融政策をどこまで続いていくのかというところです。
GDPは悪くない状態ですが、緩和的政策を取っている主な理由はインフレ率が目標に達していっていないことです。
これが豪ドルの頭を重たくしているわけですが、今後これがどう変わっていくのかを、経済指標から読み取っていくことを意識するといいでしょう。
基本的には市場の思惑との睨めっこで、どちらに思惑が偏っていっているかが大事です。
そして、貿易収支のところで触れた話に関係しますが、オーストラリアにとって中国は重要です。
そのため、できればオーストラリアの経済指標だけではなく、中国の経済指標についてもウォッチしておくことをおすすめします。
中国はアメリカとの貿易摩擦がありますし、周辺国との間での地政学リスクも考えられます。
とくに中国に市場が注目し始めると中国の経済指標の影響度も高まるので、あらかじめチェックしておくことをおすすめします。
ちなみに、とくに豪ドル円を取引する場合ですが、豪ドルだけでなくドル円の動きに引っ張られることも多いため、ドル円の変動要因となる日本やアメリカの経済指標の影響度が大きくなります。
まずはオーストラリアの経済指標が大事ですが、余裕が出てきたら関連のある各国の経済指標もチェックするようにしてくださいね。
まとめ:経済指標を味方にするために
オーストラリアの経済指標について、具体的なものを挙げながら読み取り方について一気に解説してきました。
オーストラリア経済の現状と課題、金融政策との関係などを踏まえて、経済指標を読むうえでのポイントが見えてきたんじゃないでしょうか。
では、最後にまとめということで、今回の内容をザッと振り返っていきましょう。まずは、オーストラリアの特徴など、経済指標を読むための前提となる部分です。
オーストラリアの特徴
- オーストラリアは中国との関係が深い資源国リーマンショック以降の利下げサイクルが継続している経済は好調なもののインフレ率が目標に届いていない
こういったことを踏まえて、経済指標の結果がどう金融政策へつながっていくかを考えるというのがポイントの1つです。
では、今回挙げた経済指標の中で思い出してほしいものを、重要度に関わらず5つほど再掲しておきます。
オーストラリア経済指標まとめ
- RBA政策金利発表雇用統計(新規雇用者数、失業率)四半期GDP四半期CPI貿易収支
これらがどういうものだったか、なんとなくイメージは頭の中に残っているでしょうか?
「忘れちゃった」という人は、ぜひもう一度上のほうに行って復習してみてくださいね。では、経済指標をうまく味方にして、豪ドル取引に活かしていってほしいと思います!
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- 監修者紹介/FX専門家 五十嵐勝久
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中央大学経済学部卒。アルゴ株式会社代表取締役。銀行や証券、FX会社に勤務し、営業、企画、マーケティング部に所属。40歳で会社を辞めて起業。現在はFXや証券会社などのプロモーション業務、システム開発を行う一方、システムトレーダーとしても活躍。
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