【EUR/JPY】ユーロ円の特徴と、2018年の見通しを徹底解説
- 更新日: 2020/05/28
ユーロ円はボラティリティが高く利幅を期待できるため、取引の対象にしている、クロス円の中でも人気のある通貨ペアです。
そのため、今後のユーロ円の見通し、ユーロ円を分析するうえでのコツなどについて、興味を持っている人も多いんじゃないでしょうか。
ユーロ円って、けっこう大きく動く印象があって怖いんだよね。
興味はあるんだけど、いまいちポイントが分からず手が出せてません。
別にユーロ円なんかないで、ドル円とユーロドルをやればいいのでは?
こういった人たちの背中を後押ししたり、疑問を解消するために、今回はユーロ円相場について解説していきます。
ユーロ円について、「どんな特徴があるのか?」「相場の変動要因は何なのか?」「その中でどういう取引をしていけばいいのか?」など、基本的なことから今後の取引のヒントになりそうなところまで、大きく理解が進むと思います!
この記事の目次
2018年 ユーロ円の見通しは?
はじめに、簡単に今後を見るうえでベースをまとめておきましょう。
ユーロ円の今後を見るうえでベースなのが、ECBによる量的緩和政策を終了し、利上げの開始していく方針と、日銀による大規模な量的緩和政策の継続という、金融政策面での方針の大きな違いです。
この状況は基本的にユーロ円には上昇圧力がかかるかたちですが、ECBは素直に利上げへ一直線に動いておらず、足踏みをしているような状態です。
利上げに前進すれば上昇、足踏みが続けば下落というのが大きな構図となっています。また、ユーロ円の上昇圧力を打ち消すようなリスク要因も多々あることは忘れてはいけません。
とくに最近ではイタリアの政局不安が問題となり、これが原因としてユーロ円は急落しており、2018年前半は下落相場となりました。
こういった環境にある中、2018年内の動きとしてはベースには一応上昇要因を控えながらも、ECBのハト派的な動き、リスク要因の顕在化がそれを邪魔をするという相場になっていきそうです。
ユーロ円(EUR/JPY)の特徴
ユーロ円はいわゆる“合成通貨”
まず最初に触れておきたいのが、FXの世界でユーロ円という通貨ペアは“合成通貨ペア”と呼ばれる、人工的に作られた通貨ペアだということです。
実はユーロ円は実際の為替市場、インターバンク間において直接取引されることはあまりありません。
基本的に取引されるのは基軸通貨である米ドルを介し、ユーロ円であれば、ユーロドル、ドル円を経由して取引されています。
そのため、ユーロ円相場を理解するうえで、このユーロドルとドル円の掛け合わせして見たほうがいい場合が多々あります。
簡単な関係としては、「ユーロ円=ユーロドル×ドル円」という式が成り立ちます。例えば、ユーロドル=1.10でドル円=100であれば、ユーロ円=110となります。
そのため、ユーロドルやドル円が上昇すればユーロ円は上昇、ユーロドルやドル円が下落すればユーロ円は下落します。
ここでポイントなのが、ユーロドルやドル円が同方向に動いた場合、掛け合わせられるユーロ円はそれら以上に大きく動くということです。
これを上手く拾っていくことで、1つの取引で大きな値幅を抜くことも可能となります。
主な上昇要因
では、ユーロ円の変動要因について確認していきましょう。“合成通貨”であることをふまえつつ、ユーロドルとドル円の変動要因に分解することで理解が深まりやすくなります。
国際情勢 | 地政学リスクや金融不安の後退 |
---|---|
政治 | 日本の安定政権の長期化、EU加盟諸国の政治不安の解消 |
金融政策 | ECBによる量的緩和政策の終了及び利上げ、日銀による量的緩和政策の継続 |
経済指標 | 予想よりも良い経済指標結果(雇用統計、GDP、CPI等) |
その他 | イギリスのEU離脱の合意ありの離脱 |
金融政策面から見ていくと、日銀は量的緩和を継続する方針で固まっていて、ECBは量的緩和を年内に終了することは決まっているものの、その後の利上げペースが決まっていないというような状態です。
とくにECBの利上げペースについて、早まるという思惑になるとユーロ円には上昇要因となっていきます。
その他は、基本的にリスクオンの流れになっていくものが、ユーロ円の上昇要因となっていきます。
とくにEU関係では、イギリスのEU離脱問題、イタリアの政局などリスクも抱えていますが、そういった懸念が解消していった時に上昇が期待できそうです。
主な下落要因
今度はユーロ円に下落要因についても見ていきましょう。上昇要因とは裏表の関係になっているものも多いので、その対応関係を押さえることで理解がしやすくなるでしょう。
国際情勢 | 地政学リスクや金融不安の高まり、米中貿易摩擦の激化 |
---|---|
政治 | EU加盟国の財政悪化、日本における政局 |
金融政策 | ECBによる利上げの先送り、日銀による金融政策の方針転換 |
経済指標 | 予想よりも悪い経済指標結果(雇用統計、GDP、CPI等) |
その他 | トルコリスク、イギリスのEU離脱の合意なしの離脱 |
金融政策面ではECBの利上げペースが鈍化する見通しになってくると、ユーロ円の下落要因となっていきます。
また、現状ではあまり考えられませんが、もし日銀が現状の金融政策の方針転換をして積極的な出口戦略を語り始めると、大きな下落圧力となるでしょう。
上昇要因とは逆で、基本的にリスクオフの流れになっていくものが、ユーロ円の下落要因となっていきます。
国際情勢では米中貿易摩擦、EUでは加盟国の財政悪化、イギリスのEU離脱問題、トルコリスクなど、そういった問題が顕在化してくると、ユーロ円が下落することが考えられます。
(※)以上の上昇・下落要因については一般的な反応について解説したものであり、相場状況によっては逆行することもあります。例えば、上昇要因を期待して相場が上昇した後に結果が出ると、織り込み済みということで下落の反応になることもあります。
ユーロ円の取引額
ここで、ユーロ円という通貨を理解するために、米ドル・ユーロ・日本円というそれぞれの通貨ペア間の取引額について見ていきましょう。
ちなみに、以下の数字はインターバンク間以外にも銀行と実需筋
2007年 | 2010年 | 2013年 | 2016年 | |
---|---|---|---|---|
ドル円 | 438 | 567 | 980 | 901 |
ユーロドル | 892 | 1,099 | 1,292 | 1,172 |
ユーロ円 | 86 | 111 | 148 | 79 |
2007年から2016年までの3年ごとに、それぞれの通貨ペアの取引額推移がわかります。
上下動もありますが、これを見てわかるのはユーロ円の取引額が他の通貨ペアと比べて小さいものに留まっているということです。
3通ペアの中で取引額がもっとも多いのはユーロドルですが、そのユーロドルに対してユーロ円は約10分の1といったところでしょうか。
ドル円に対しても約5分の1ほどで、とくに2016年はドル円が多いのに対してユーロ円が小さいことが影響して、10分の1以下の規模になっています。
取引額の大きい通貨ペアの相場のほうが、一般的により相場を動かす力が大きいと考えられます。
そのため、ユーロ円は取引額が小さいためドル円とユーロドルに引っ張られやすくなっているということが、この表から推測することができます。
例えば、ユーロドルが上昇トレンドにあって、ターゲットとなりそうなラインがもう少し上にあったとします。この中でユーロ円も上昇していたとして、もし先に節目のラインに届いてしまっていたとしら、どうなるでしょうか?
ユーロ円を見ている筋からの利益確定売りによってユーロドルの上昇を引っ張る動きも出るでしょうが、おそらくはそれよりもユーロドルのトレンドの勢いが勝り、ユーロ円は節目を超える動きになるでしょう。
もちろんその時々の相場状況によりますが、取引額からこういった可能性も予測できるということです。
では、ユーロ円のチャートは無視してもいいかというと、そういうわけではありません。筆者の体感としては、ユーロ円は少しオーバーシュートしながらもテクニカルが効くというイメージを持っています。
このあたりのさじ加減がユーロ円の難しいところ、という印象です。
ユーロ円を取引する際のポイントとは?
ユーロ円という通貨ペアについて、その仕組みや変動要因、動き方の特徴について解説してきました。これらの内容を踏まえつつ、ここからはこのユーロ円の取引に関する部分を解説していきます。
ユーロ円の動く時間帯
ユーロ円は、その組み合わせどおり、基本的に日本の市場が動いている東京時間と、欧州の市場が動いている欧州時間によく動きます。
ただし、東京時間や欧州時間のどの時間もよく動くのかというとそうではありません。時間によって、よく動く時間とそうでもない時間があります。
東京時間の場合、よく動くのは9時から11時までの2時間です。
この時間は、午前9時55分に決まった仲値が5分後の午前10時に発表されることもあり、国内輸出企業や輸入企業といった実需筋や銀行が午前9時頃からマーケットに参加し、頻繁に売買を行うことから為替相場がよく動きます。
欧州時間の場合、よく動くのはロンドン市場が動き出す16時過ぎからとなります。ただ、欧州の場合、サマータイムを導入していることから、冬時間の期間は1時間後にずれ込んで、17時過ぎによく動きはじめます。
その後、20時頃まで(冬時間の場合は21時頃まで)比較的活発に動きます。
なお、ユーロ円はニューヨーク時間にもよく動きます。なぜなら、基軸通貨であるドルが主役のこの時間は、ドル円もユーロドルも活発に取引されるからです。
ユーロ円はドル円とユーロドルの合成通貨であることから、ドル円とユーロドルの影響を受け、ニューヨーク時間が始まる21時(冬時間は22時)からの4時間(つまり、ニューヨーク時間の午前中)まで活発に動きます。
ユーロ円とファンダメンタルズ分析
すでに説明したとおり、ユーロ円は間にドルを挟んだ合成通貨であることから、動きが読みにくいのが特徴です。
円がドルやユーロに対して最も強い場合や最も弱い場合は動きが非常に読みやすく、大きく動くことから利幅を狙いやすいのですが、ドルが円やドルに対して最も強い場合や弱い場合は、円とユーロの強弱が分かりにくいため、どちらに進むのか、見通しが立てにくくなります。
そのような場合に考えたいのがファンダメンタルズ分析です。円とユーロ、それぞれを考えた時に、買い要素と売り要素がどれくらいあるのかを考えます。
例えばユーロですが、「ユーロとは」のところで書いたとおり、もともと多くの矛盾をはらんでいます。現在反EUの流れが強まっており、反グローバリズムの動きが強まってきています。
反グローバリズム、反移民等の流れとなっており、時々テロも発生するなど、。EU体制に影を落とす出来事が起こるたび、よく売られます。
また経済についていえば、EU全体の景気は緩やかに回復しているものの、個々の国々の経済状況を見ると、バラバラです。
ギリシャ危機で問題となったギリシャは景気回復が足踏み状態となっている一方で、イタリアやスペインは徐々に持ち直してきています。また、EUのけん引役であるドイツは好調が続いています。これらの国々の経済動向も、ユーロ買い・ユーロ売りの判断材料になります。
一方、円については、アベノミクス以降、景気回復傾向にあることや、現政権が安定していることもあり、大きな売りが起こりにくい傾向にあります。
北朝鮮のミサイル問題や、森友問題をはじめとした国内問題もありますが、いずれも円売り要因にはなりにくい状態です。そのため、円に関しては、米国の長期金利の状態や日経平均株価の動向、また、米国の政治動向などの影響を大きく受けます。
日銀の金融政策や日本の政治動向といった円単独での売り・買い要因以上に、米国の政治動向、相場状況等の影響を受けやすいことに注意が必要です。
なお、ユーロ円で参考にしたいのが、実行為替レートです。実効為替レートについては、国際決済銀行でデータを取得することができます。
例えば、ユーロが過去と比較して安い水準にあるなら、いずれ反発することが予想されますし、円が高止まりしているのであれば、いずれ下落することが考えられます。
もちろん、ユーロ円の日々の動きは、これらのことからすべて分かるわけではありません。しかし、大きな流れを見る上での参考にするには有効な手段となります。
ユーロ円で気を付けるべき経済指標
ユーロ円の取引で欠かせないのが、日本とユーロの経済指標です。それぞれの経済指標で重要なものは必ずチェックしましょう。
例えばユーロに関しては、毎月発表されるECBの政策金利が挙げられます。また、四半期GDPや生産者物価指数、小売売上高、鉱工業生産などの他、ECB理事会などの重要イベントやその後のECB議長の発言なども大きな影響を与えます。
一方、円に関しては、日銀短観や消費者物価指数、GDP、完全失業率・有効求人倍率、日銀金融政策決定会合が挙げられます。
ただ、日本の経済指標に関しては、米国やEUの経済指標に比べて為替相場に与える影響は小さいため、あまり大きな値動きにならないことに注意が必要です。
取引におけるメリット・デメリット
ユーロ円は“合成通貨ペア”であるということはすでに説明しましたが、こういった特徴を持っていることから、ユーロ円を取引をすることにはメリット・デメリットが存在します。このメリット・デメリットについて、押さえていきましょう。
知っておきたいメリット
まずはユーロ円を取引するにあたってのメリットとして、以下の3点について説明していきます。
- 大きな値幅を狙うことができるメジャー通貨関連で情報が入手しやすいスプレッドがドル円に次いで狭い
1つ目は合成通貨ペアという性質に直接関係しますが、ユーロドルとドル円が同方向にトレンドが出た場合、ユーロ円を取引することで大きな値幅を獲得することができるというものです。
もともとユーロ円はボラティリティが高い通貨ではあるので、大きく利益を取りたい人にはありがたい通貨ペアです。
そのうえで、こういったユーロドルとドル円の動きも見ることによって、より効率的な取引を可能にすることができます。
そういう意味で、ユーロ円を取引する場合は、ユーロ円だけのチャートを見るだけでなく、ユーロドル・ドル円のチャートも見ながら、三角形の関係を意識したうえで狙いを絞って取引することをおすすめします。
2つ目は情報に関する部分です。ユーロ円に関係する米ドル・ユーロ・日本円は三大メジャー通貨とも呼ばれ、FXにおいては基本とすべき通貨です。
そういったこともあって、これらの通貨に関する情報も手に入りやすく、有効な情報を適時に入手しやすい環境がそろっています。
トレーダーにとっては、情報という面ではユーロ円は取引しやすい通貨ペアと言えるでしょう。
最後に3つ目ですが、最近の傾向としてユーロ円のスプレッドを狭く設定するFX会社が出てきているという点です。中には0.4銭というドル円並みに狭い設定のFX会社もあります。
FX会社によって差が出やすい部分でもあるので、ユーロ円を取引したい人はあらかじめリサーチしておくことをおすすめします。
ユーロ円スプレッドが狭いFX会社
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買いスワップポイント | ||
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知っておきたいデメリット
続いて、ユーロ円を取引するにあたってのデメリットについても見ていきましょう。
- 動きが読みにくいことも少なくないボラティリティが高くハイリスク急落のリスクを抱えている
1つ目は合成通貨であることの関連ですが、ユーロ円の動きがユーロドルやドル円によって引っ張られやすいことに起因します。
他の通貨ペアの動きに引っ張られることになると、ユーロ円単体ではよくわからない動きとなることがあるわけです。
その対策としては、ユーロ円を触るうえではユーロ円だけのチャートに固執せず、ユーロドル・ドル円との三角形の関係を理解したうえで、チャート分析を複合的に行っていくことがおすすめです。
やや難易度は高くなりますが、チャート分析の向上にもなるのでぜひ実践してみてください。
2つ目はメリットの部分で触れたことの裏返しでもありますが、ボラティリティが高いため大きな利益が期待できる反面、トレンドに逆行してしまうと大きな損失を出す可能性もあるということです。
そのためしっかりとリスク管理を徹底し、確実な損切りを実行する必要があります。
3つ目もリスクに関連する話ですが、その中でも急落に関するリスクの部分です。
ユーロ円は2018年もイタリアの政局絡みで急落を経験していますが、現在もこの動向は要警戒ですし、他にもイギリスのEU離脱問題、EU加盟国の財政問題、難民受け入れに関する対立など、火種をたくさん抱えている状態です。
また、トランプ米大統領の誕生から世界的にも保護主義の動きが見られていて、貿易戦争によるリスク回避の動きがユーロ円を直撃する可能性もあります。
日本円絡みでも、量的緩和政策の終了に対する思惑が出てきた場合、株価の暴落を伴う円高の動きが顕在化するかもしれません。
こういったもしかしたら急落するかもしれないリスクというのは、常に意識したうえで、あらかじめ対策を講じておくのがベターです。
こういったところまで想定しておくと、逆にリスクをチャンスに変えることも不可能ではありません。
2018年、ユーロ円で取るべき戦略
ユーロ円に関しては、日銀とECBの金融政策面での方向性の違いにより、基本的には上昇圧力がかかりやすい状況です。
しかし、同時にいくつも急落のリスクも抱えており、急落リスクを踏まえたうえでの戦略を考えていく必要があります。
ECBの要人発言等から市場のコンセンサスを読む
ECBの今後の金融政策としては、2018年内に量的緩和政策を終了し、市場としては2019年9月10月あたりでの利上げ実施というのが現状のコンセンサスです。
ユーロ円の相場はこの利上げ時期のに対するコンセンサスによって、大きく左右されることになります(早まればユーロ高、遅くなればユーロ安)。
この基本的なかたちを踏まえつつ、あとはドラギECB総裁をはじめ、要人たちの発言から市場のコンセンサスが変わっていくのを読むことがポイントです。
また、ECBの方針決定のもととなる経済指標についても、同様にチェックしていく必要があります。
金融政策が方向転換する局面では、大きなトレンドが起こる可能性があります。それを捉えるためにも、こういった市場のコンセンサスの移り変わりを細かくチェックしていきましょう。
ちなみに、金融政策の方向転換という観点では、日銀の量的緩和政策の終了に対する思惑も同様です。
これはまだまだ先になるとは思われますが、今後の大きなシナリオをイメージするうえで、そこまで頭の片隅に入れておいてもいいかもしれません。
急落リスクを踏まえたシナリオも用意する
すでに触れたように、顕在化する危険を秘めているリスクをさまざま抱えているのが現状です。
これらのリスクが顕在化して、市場がリスクオフの流れになると、ユーロ円は急落していくことが考えられます。
ニュースを細かくチェックしていくことで、ある程度はその予兆を感じることができることもあります。
リスクの火種になりそうなテーマに市場が注目しはじめたら、いち早くそのシナリオを考えて準備をするようにしましょう。
トレンドを狙って取引をする
ユーロ円は合成通貨であり、ユーロドルとドル円の動きによっては大きなトレンドが発生することになります。
チャート的な側面から取引戦略を考えるうえでは、このユーロドルとドル円のチャート分析を併せて行うことが大切です。
また、必ずしもユーロ円の取引にこだわる必要はなく、基本的にはユーロドルとドル円の取引をしながら、両者が同方向に動きそうなところでユーロ円に切り替えるという方法も効率的です。
ユーロ円のメリットはトレンドが伸びる部分なので、それを活かすためにトレンドを狙った取引が有効です。
そして、それを実現するためには、ユーロ円だけでなく、ユーロドルとドル円のチャート分析も欠かさないようにしてください。
ユーロ円取引の難易度とトレードスタイル
ユーロ円の取引についてさまざまな角度から解説してきましたが、結局のところ難易度としてはどの程度なんでしょうか?
この疑問に対する回答としては、「難易度は高い」というところをお伝えしておきたいと思います。
この大きな理由としては、ボラティリティが高くトレンドは出やすいものの、合成通貨ペアであることから、ユーロドルやドル円に引っ張られて動きを読みづらいところがあるからです。
そのため、リスク管理をしっかりしたうえで上手く取引をしないと、大きく損失が出る可能性があるわけです。
このことは踏まえたうえで、トレードスタイルに応じたユーロ円のトレードのしやすさについても、簡単に触れておきましょう。
スキャルピングも十分に可能
ユーロ円はトレンドが出たら、早いスピードで動くことが多い通貨ペアです。そのため、トレンドが発生した場合には、スキャルピングでも大きく稼ぐことが可能です。
逆にレンジ相場において、ピンポイントで細かい逆張りを狙うのは、行き過ぎてしまうことも多いため、あまり向いていないかもしれません。
また、スキャルピングでは取引回数が増えるため、スプレッドの狭さが重要になってきます。この点、ユーロ円はFX会社によっては0.4銭という狭いスプレッドを提示しています。
取引コストという面で、ユーロ円はスキャルピングと相性が良い通貨ペアです。
デイトレードはトレンドを狙い打て
ユーロ円はボラティリティが高く、トレンドが続きやすいという傾向があります。デイトレードの基本ですが、トレンドにうまく乗っていくことができれば、ユーロ円のデイトレードはうまく利益を伸ばすことができます。
ただし、ユーロ関連の相場が動き出してくるのは、夕方のヨーロッパ時間に入ってからが多いですが、このタイミングに相場を見られない人は多いかもしれません。
もちろんユーヨーク時間にも十分に動きますが、相場が動き出すところを最初からチェックしたいという人には、少し時間帯が合わない可能性もあります。
スイングではスワップポイントに注意
ユーロ円はスイングベースで見ると、非常に大きな値幅が動くことがあります。最近では2018年5月にイタリア政局絡みでわずか1週間で7円近い下落を見せたこともあります。
ハイリターンのチャンスもありますが、リスク管理が徹底は必要となります。
また、ユーロはまだ利上げがスタートおらず、今のところ低金利通貨です。FX会社によってはユーロ円のマイナススワップが意外と大きくなることもあるので(※)、日数を持つ場合はあらかじめ注意しておいたほうがいいでしょう。
(※)とくに買いスワップポイントと売りスワップポイントが均等でないFX会社の場合、取引方向によってはマイナススワップポイントが大きくなることがあります。
ファンダメンタルズとテクニカルのどちらに重点を置くべきか
ユーロ円に限らず、どの通貨ペアを取引する際にも重要なことですが、どのようなスタイルで投資をするのか、ということを考えなくてはなりません。長期トレードを考えている場合とデイトレなどの短期トレードを考えている場合とでは、取引方法も、参考にするものも違います。
長期であれば、やはりファンダメンタルズ分析に重点を置いて取引した方が良いでしょう。なぜなら、中央銀行の金融政策や国の経済政策は、長期に渡り、為替相場に大きな影響を与えるからです。
一方、短期トレードの場合は、テクニカル分析に重点を置いて取引した方が良いでしょう。先ほど書いたとおり、中央銀行の金融政策や各国の経済政策は為替相場に大きな影響を与えますが、一方向の動きにはならないからです。
例えば円安が続くからといって、円が一日中下がりっぱなし(つまり、ユーロ円では上昇)になるわけではなく、途中で一時的な上昇を挟むことがほとんどです。
このような相場のノイズをもとらえ、利益にしていくのが短期トレードですので、そのためにはテクニカル分析を中心に為替相場を分析した方が、効率的に利益を得ることができます。
このように、トレードスタイルによって、何を参考にして取引するかは異なります。ユーロ円を取引する前に、まずはどのようなトレードスタイルで取引するか考え、テクニカル分析とファンダメンタル分析のどちらが有効かを判断しましょう。
ユーロ円のトレード手法例
ここでは、ボリンジャーバンドを使ったトレード手法を紹介します。使う足は、5分足のローソク足と1時間の平均足です、そして10日移動平均線です。なお、ボリンジャーバンドは20日間で設定します。
1時間の平均足の方で相場の方向性を確認し、5分足のローソク足でエントリーと利益確定のタイミングを計ります。
1時間の平均足の陽線が5本以上となった時に、5分足のローソク足を確認します。
平均足はローソク足よりもノイズが少なく、ローソク足で表示した際に、トレンド発生時にどうしても起こる一時的な反対方向の動きをできるだけ減らした状態で表示でき、トレンドを読みやすいという利点があります。
しかし、平均足も完全にノイズを取り除けるわけではなく、トレンド発生時に一時的に反対方向の平均足が表示されることもよくあります。
しかし、陽線または陰線の平均足が連続して4本続けば、それは強いトレンドが発生していることを示しているため、仮に5本目の平均足が陰線(または陽線)になったとしても、それがトレンド転換を示していることにならない場合もよくあります。
もしも陽線が4本続いた後、陰線が続いたとしても、それが4本連続しなければ、一時的なノイズとして判断します。その判断が不安な場合に、10日移動平均線を確認し、移動平均線の向きがどちらを向いているのか確認するのです。
仮に陰線が数本続いたとして、10日移動平均線が上向きであれば、上昇トレンドにあることを意味します。
5分のローソク足の方はボリンジャーバンドと、10日移動平均線を表示します。もし5分のローソク足が上向きの10日移動平均線に上から下にタッチしたら、そこがエントリーのタイミングです。
あるいは、ボリンジャーバンドの-2σを上から下に抜けた時や、バンドウォークになっていて、ローソク足が+1σにタッチした時もエントリーのタイミングです。そして、ボリンジャーバンドの+2σを抜けたら利益確定します。
まとめ : ユーロ円は見ておきたい重要通貨ペア
ユーロ円という通貨ペアの特徴、FXにおけるユーロ円取引について、一気に解説をしてきました。ユーロ円に関する理解が深まったのではないでしょうか。ぜひここで得た知識を、ユーロ円取引に活かしていってほしいと思います。
最後にまとめということで、今回の内容のエッセンスを、ザッといくつか確認しておきましょう。まず、ユーロ円の特徴からです。
ユーロ円の特徴
- ユーロ円はいわゆる“合成通貨ペア”である
- ユーロドルとドル円が同方向に動くと、ユーロ円は大きく動く
- ユーロ相場を占ううえでECBの利上げへの姿勢が重要
- 現状、ユーロは急落リスクを複数抱えている
次に、この特徴をを踏まえた取引戦略を立てるうえでのポイントについても確認していきます。
取引戦略を立てるうえでのポイント
- ECBの要人発言等から市場のコンセンサスを読む
- 急落リスクを踏まえたシナリオも用意する
- トレンドを狙って取引をする
これらのポイントを意識して取引戦略を立てることで、ユーロ円で大きく利益を稼ぐチャンスが広がっていくでしょう。
三大メジャー通貨の一角でもあるユーロ円、合成通貨ペアですがFXをやるならぜひ見ておいていただきたい重要通貨ペアです。ユーロドル・ドル円と併せて、ぜひチェックしていただきたいと思います。
FXの基礎基本から学びたい方は、以下の記事を参考にしてください。
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